2014 Fiscal Year Research-status Report
宮内庁所蔵『王公族実録』の基礎的研究:帝国日本は旧韓国皇室をいかにして記録したか
Project/Area Number |
26770218
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新城 道彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (40553558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 王公族実録 / 浅見倫太郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本近代史・朝鮮史の第一級資料ともいえる『王公族実録』を整理して多くの研究者が参照できるようにすることを目的とする。ただし、『王公族実録』はその存在すらあまり知られておらず、基礎的な情報ですらほとんど明らかになっていない。そこで、実録の中身や関連資料を整理・データ化するだけでなく、編修委員選定の背景や他の実録との関連性などを『進退録』『実録編修録』を用いて解明した。 宮内省図書寮の長官・図書頭(ずしょのかみ)をつとめていたのは、『舞姫』の作者としても有名な森林太郎(鴎外)であった。彼は浅見倫太郎を図書寮嘱託員として取り立て、1919年6月2日に『王公族実録』の編修を命じた。彼は実録編修の報告書のなかで、「真実」を記載するために公文書・私文書にかかわらず広く史料を集め、「不偏不倚」の精神で作業にあたらなければならないとの考えを示している。また、古来より歴史を編修する者は評論を加えようとするが、それは誤った態度であり、『王公族実録』では賛辞や蔑みのような個人の考えを排除しているとも述べている。つまり、史官が尊ぶべきは毀誉褒貶を論ずることではなく、史料を収集選定し記録することだというのだ 。浅見がいかに主観の排除に徹したかが明らかとなった。 資料のデータ化に関しては『李太王実録』および『李太王実録資料』をすべて入手し入力に着手した。現在40%が終了しており、残り2年の研究期間で完了する見込みが立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り資料を入手でき、データ入力も40%終わった。その他関連資料を入手でき、編修者である浅見倫太郎の考えや行動が徐々に明らかになってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータ化作業を続け、王公族実録の全体像を把握する。 同時期に編修された天皇皇族実録や朝鮮王朝実録と比較研究し、王公族実録の特徴をより鮮明にする。
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Causes of Carryover |
アルバイトの確保が遅れ、数か月分の謝金が浮いた。 資料の入手に一部手間取り、すべてを複写することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
入手しきれなかった資料の複写代として使用する。 周辺状況を調査するために必要な資料、たとえば朝鮮王朝実録に関連する資料調査に活用する。
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