2015 Fiscal Year Research-status Report
戦国大名分国およびその周辺地域における領域支配の研究
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26770222
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村井 良介 神戸大学, 地域連携推進室, 特命講師 (30419684)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 戦国大名 / 戦国領主 / 国衆 / 毛利氏 / 北条氏 / 大友氏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として関東地方、九州北部、中国地方について、戦国領主と支城主の領域的支配について分析をおこなった。 関東については北条分国について検討した。従来、北条分国については在地領主掌握が進み、均質化していくと見通されていたが、近年では外縁部における自立的な戦国領主や支城領主の存在が指摘されている。本研究では、武蔵国の小机城主や稲毛地域に所領を持つ江戸太田氏等の分析などを通じ、分国の領域秩序が大名権力と戦国領主の関係に規定されて形成されてくる過程を考察した。このことから、北条分国に先進的/後進的な異質な二地域があると見るのではなく、戦国期の権力構造の流動化と、その再秩序化の過程に応じて、領域秩序のあり方が多様になるととらえ直した。これについては平成27年6月の洛北史学会大会において「戦国大名分国における領域秩序形成の過程―北条分国を例として―」と題して口頭報告し、また論文化したものを投稿して、近日刊行予定の『洛北史学』18号に掲載されることが決まっている。 九州北部については、主として大友氏などについて分析した。具体的には大友宗麟感状における「家中」用例を分析し、それが戦国領主や大友氏の家来でも、判物を発給するような重臣の配下を指す場合に限られていることを明らかにした。また中国地方については「洞」用例の分析をおこない、それが「家中」より漠然とした範囲を指して用いられていることを指摘した。これらについては、平成27年8月の中世史サマーセミナーで「戦国期毛利・大友分国における洞と「家中」―東国との比較のために―」と題して口頭報告した。また平成28年度には、この内容の一部を論文化する予定である。 このほか、毛利分国の戦国領主等について、「安芸毛利氏をめぐる研究について」と題して研究史整理をおこなったほか、本研究のの研究成果の一部を用いて著書『戦国大名論』を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度の史料調査や刊本検索の成果を活かして、九州北部や関東地方の研究を進めることができ、また中国地方についても昨年度までの研究を発展させることができた。複数の地域について分析が進められ、比較研究の準備が整いつつあるほか、また編著1冊、単著1冊、口頭発表2度と成果の公表もおこなうことができている。さらに口頭発表についても論文化を進めている。九州地域の史料検索が北部に偏り、南部の検討が遅れている面はあるが、中国地方の史料検索も過去に作成したデータベースを補完する作業が進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は最終年度であるので、研究成果のまとめに向けて考察を進め、研究成果の公表を。平成27年度までに、東国、西国でそれぞれ事例を分析することができているので、さらに分析を深めつつ、それらを比較をおこない、個別大名研究としてではなく、戦国期の権力構造の特質を解明していきたい。大名権力と戦国領主の関係では、従来毛利氏と北条氏は対照的にとらえられていたが、大名権力と判物を発給するような重臣層との関係という点では必ずしもそうはいえないのではないかという見通しも立ってきている。こうした点をさらに分析し、戦国期権力の多様性と、その多様性を生み出す構造を解明することを目指す。
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Research Products
(5 results)