2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770228
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
町田 祐一 日本大学, 生産工学部, 助教 (00546260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 職業紹介事業 / 総動員体制 / 労働行政 / 内務省 / 安積得也 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は総動員体制の構築と職業紹介行政の展開を課題として、内務省内の政策決定過程の解明、中央職業紹介事務局を分析対象とした。 前者については、安積得也事務官をはじめとする内務省内の動向のかなりの部分が判明した。1929年安積は主任事務官として「法令立案」「各種調査」「外国事例ノ蒐集」を担当した。「立案事項覚書」、「職業紹介機関ノ系統ニ関スル改正案」(七月二日付)、「職業課主管事務概要」、また「職業紹介機関ノ系統ニ関スル件」会議議事録などから、機構改革の調査・立案作業にも加わった。翌年安積は、「応急失業対策項目案」、「職業紹介制度改正案要綱案」、「職業紹介所官制案」、「職業紹介所国営ニ関スル法制関係」などの政策提案を行っている。ただしこれらは時期尚早として予算の概算要求段階で否決されている。また、安積が1936年の職業紹介法の改正に大きな役割を果たした。同法は二年後の国営化への布石として、全国に八つある事務局の所管を内務省から府県知事へ移したものであるが、『職業行政』で安積は、この意義を「我国当面及将来ノ国家的大問題たる人口職業問題に正面から取組んでゆく行政の構へを作らうといふもの」とし、「職業を必要とする人口(生産年齢層人口)と之が為の職業機会との相互関係を適正円滑ならしめむとする全ての行政を指称」する「職業行政」の確立を意図しているとした。これが総動員体制を準備した重要な法改正であったことがわかった。 ただし後者については、事務局よりも北関東一帯の職業紹介所が国営化を推進する勢力であったことがわかりその分析が課題として残った。さらに満州事変後に資源局が進めていた総動員構想の中でも、職業紹介事業が重要な役割を期待されていた事実が新たに判明した。したがって、総動員体制の構築においては資源局の動向と委員として列席していた内務省の路線の双方の合致点が国営化であったと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付決定以前及び決定後の文献収集を迅速かつ適切に行い、これまでの成果を突き合わせることで、概ね順調な進捗状況を得ることができた。以下、現在までの達成度につき、研究計画・方法と比較しながらまとめる。 平成26年度分では内務省関係資料、中央職業紹介事務局関係史料の収集と分析を予定していた。これらについては、概ね収集を終了し、職業紹介行政の展開につき、内務省内の動向をはじめ、事務局の動向を掴むことができた。 このうち、前者の項目として最重要視していた安積得也関係文書については関係する時代に就いての悉皆調査を行い、1930年代の内務省内における動態をかなりの部分把握し、一部を平成26年度日本大学史学会大会報告で研究報告することができた。合わせて、研究費公布以前に掲載が決定していた『安積得也関係文書目録』がICUから次年度刊行される予定である。 また、平成27年度に予定していた糸井文庫所蔵資料中、メディア利用の部分、長野県須坂市における関係個所の史料調査も終了し、後者は『信濃』に研究費交付前に掲載が決定し、メディア利用は次年度日本大学史学会大会にてラジオを事例に研究報告を行うことが決定している。この他、古本屋において、当該時期の栃木町職業紹介所の事務員の旧蔵史料を入手する好機を得、こちらについては平成26年度日本大学生産工学部学術講演会にて研究報告することが出来た。ここから職業紹介行政の展開の主要部分が解明された。 さらに、内務省筋とは異なる陸軍省、資源局における総動員構想の中に、既に公立職業紹介事業の展開と組織再編の計画が盛り込まれていることがわかったため、この点についても国立公文書館の検索を行うに至った。ただしこの点は事実関係が不明なため課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画は、中央職業紹介事務局及び各職業紹介所史料の動態を分析することである。これに加え、前述した陸軍省、資源局関係の公文書史料を悉皆調査するとともに、当該時期の研究状況を把握し、内務省との関係性も視野に入れながら研究を行いたい。 具体的な課題としては、第一に東京の中央職業紹介事務局の動向を復元すること、第二に、前述した群馬、栃木、埼玉、千葉など、国営化推進に極めて大きな力を発揮した北関東一帯の職業紹介所の動向を踏まえ、1938年の法改正に至る経過を跡付けていく作業を行うこと、第三に、各職業紹介所の地域社会における事業展開の特質を抽出する作業を行うこと、第四に、新たに課題として浮上した陸軍省、資源局における総動員構想と実施計画、他省庁との関連性などについても文献調査及び分析を進めることである。 以上の調査に基づく研究報告・論文発表の予定として、第一に、前述した職業紹介所のメディア利用については平成27年度日本大学史学会大会にて研究報告を行い、年度内に論文化する予定である。第二に、栃木町職業紹介所の事業展開についても、栃木県内の状況を地元新聞などを悉皆調査することで地域社会の動態を復元しながら論文化する予定である。第三に、1930年代の内務省内における動向についても、安積得也文書を中心に、論文化する予定である。ただしこちらは平成28年度に予定していた議会議事録の悉皆調査による分析結果との突き合わせが必要な作業として残されているため、研究の進捗状況次第では、最終年度に持ち越すことも想定する。
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