2015 Fiscal Year Research-status Report
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26770228
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
町田 祐一 日本大学, 生産工学部, 助教 (00546260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 職業紹介事業 / 総動員体制 / 労働行政 / 内務省 / 安積得也 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は総動員体制の構築と職業紹介行政の展開を課題として、中央職業紹介事務局史料、各職業紹介所史料を分析対象とした。 前者については、関係文献を購入のうえ中央職業紹介事務局が大正末期から昭和戦前期における内閣との諮問などを通じて、国営化の道筋を検討していたこと、さらに事務局内における史料から、1935年に極秘に意見書を作成していたことも判明した。あわせて、事務局内の事務分掌についても実態が判明し、具体的な事務立案経過についてもおおよその実態が判明した。あわせて、ラジオ利用に際して東京府の職業紹介所が真っ先に受信機を設置して求人求職の便宜を「即時性」と「双方向性」を確保しながら行っていたこと、メディア利用の多様性についても判明した。また、周辺事情ではあるが、公立事業が望まれる社会背景として、営利事業における人身売買などの社会問題についても新聞雑誌メディアを収集し、一定の社会的認知を得ていたことがわかった。 後者については、前年度購入した栃木県における公立事業の役割を検討し、少年職業紹介事業に力点を置いた事業を展開していたこと、国営化に対して賛同し、北関東周辺で会合を繰り返すなど政治的動向を一定程度解読することができた。 ここから、昭和恐慌期における公立事業の役割の重要性とともに、地域への多様なメディアを通じた広がりも見られたこと、それとともに斯業関係者の国営化も推進されたことが具体的に明らかにできたと考えている。 ただし、昨年度課題としていた資源局の進めた総動員構想については、職業紹介事業の役割に期待していたことは判明したものの、それ以上の実態解明には現時点では至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付決定以前及び決定後の文献収集を迅速かつ適切に行い、これまでの成果を突き合わせることで、概ね順調な進捗状況を得ることができた。以下、現在までの達成度につき、研究計画・方法と比較しながらまとめる。 平成27年度分では、中央職業紹介事務局史料、各職業紹介所史料の収集と分析を予定していた。これらのうち収集については、東京大学社会科学研究所糸井文庫、長野県下の職業紹介所を予定していたが、既に前年度までに概ね調査を終了したため、本年度史料収集に関しては近年公開された国立国会図書館安田辰馬文書の膨大な一次史料の複写、および古書の収集・データベース上での検索による史料収集を行った。 一方、分析は、関係文献を購入のうえ、前提となる時代背景について一層の理解を深めると同時に前述史料をもとに分析をすすめ、内務省のメディア利用につき、後述するラジオ利用、映画利用について口頭報告を行うことができ、公益事業の展開に対する営利事業に対する抑制政策についても、風俗史学会での口頭報告を行うことができた。ラジオ利用については論文掲載が決定、映画利用・営利事業への政策については目下論文投稿を準備中である。 本年度については、課題としていた職業紹介行政の展開につき、内務省内の動向をはじめ中央職業紹介事務局、各職業紹介所のメディア利用の動向について考察を深め、各職業紹介所の動態についても、概ね解明することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画は、国営化運動関係史料及び帝国議会議事録史料を収集・分析することである。これに加え、前年度課題となっていた陸軍省、資源局関係の公文書史料を悉皆調査するとともに、当該時期の研究状況を把握し、国家総動員法との関係性を視野に入れながら研究を行いたい。 具体的な課題としては、第一に群馬、栃木、埼玉、千葉など、国営化推進に極めて大きな力を発揮した北関東一帯の職業紹介所の動向を収集した史料をもとに分析し、1938年の法改正に至る経過を跡付けていく作業を丁寧に行うこと、第二に、帝国議会における審議過程を辿りながら、陸軍省の総動員構想や他省庁との関連性について政治史・政局史をふまえながら文献調査及び分析を進めることである。第三は、近年公開された国立国会図書館安田辰馬文書における国家総動員法関連の史料の複写及び分析である。既に一部を複写し、地方の各職業紹介所についての動態は解明できたものの、国営化運動や内務省内の動向と、国家総動員法との関係が現時点では不明である。今後は同史料群の関連部分を複写し、その連関性の解明に努めたい。 以上の調査に基づく研究報告・論文発表の予定として、第一に、職業紹介所の国営化については論文投稿を準備する予定である。第二に、1930年代の内務省内における動向について、平成26年度に分析を行った安積得也文書目録を中心に議会動向との分析を進め、学術論文として投稿することを予定している。第三に、本年度までの分析結果の論文投稿も逐一予定していく。
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