2021 Fiscal Year Research-status Report
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26770230
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
日比 佳代子 明治大学, 学術・社会連携部博物館事務室, 専任職員 (40468830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転封 / 藩 / 大坂屋敷 / 記録管理 / 書状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、延享四年の譜代大名内藤家の岩城から延岡への転封を素材に、内藤藩がこの転封にどのように対応したのか、転封後の藩政の展開、領地への定着過程を検討するものである。2021年度は、新領地が江戸から非常に遠い延岡であったことに、内藤藩がどのように対応したのか、江戸と国元との結びつきをどのように確保していたのかという問題を検討した。 2021年度以前の研究において、転封を機に新設された大坂屋敷に注目し、内藤藩の大坂屋敷関係史料の全体像の把握、大坂屋敷の組織の分析などをおこなってきた。年貢米の売却や資金調達を担う大坂屋敷は、経済的な側面から評価されることが多いが、内藤藩の大坂屋敷に関する分析を進める中で、同藩の大坂屋敷が江戸・国元間の書状や人の往来に深く関与していることが明らかになってきた。この問題を深めるべく、まず、大坂屋敷関係の文献調査を実施し研究史の整理をおこなった。続いて、人の往来とそれに関わる書状のやり取りが分かる寛政4年、各種関連記録が最も多い天保4年を対象年として、それぞれの年の大坂屋敷関係の書状留や日記、これと関連する江戸や国元の書状留や日記の内容をデータベース化した。 寛政4年と天保4年のデータベースのうち、後者を分析し、藩内の情報や藩士の移動情報を伝える書状が、国元から大坂へ、大坂から江戸へと、大坂屋敷を中継して送られており、大坂屋敷は江戸と国元の間で人と情報の中継地点として重要な役割を果たしていること、延岡への転封をきっかけに、長距離の書状の往来や経費を管理するために書状への番号付与や御用部屋による書状送付の一括管理が導入されたことなどが明らかになった。またこれまでの藩士の由緒や藩政組織の調査で得た知見を反映し、内藤藩の上級役職とその就任者の変遷を収録した内藤家文書の「御役人前録」の翻刻、解題作成をおこない、資料集『内藤家文書 御役人前録』を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全体として研究活動を十分に行うことができず、2021年度の前半はアルバイトの雇用なども困難であったため、作業が予定よりも遅れ、寛政4年と天保4年の大坂屋敷関係の記録のデータベースは作成し終えたが、データベースの分析は天保4年分までとなり、寛政4年分は次年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は天保4年の大坂屋敷関係の記録のデータベースを分析して、転封によって西国に領地が移動し、江戸から領地が遠く離れてしまった内藤藩で、人と情報の中継地点として大坂屋敷が重要な役割を果たしたことを明らかにした。今後は人の往来とそれに関わる書状のやり取りが分かる寛政4年の大坂屋敷関係の記録のデータベースを分析し、江戸、大坂、国元と長距離を移動していく藩士の動きを明らかにし、これがどのように藩に管理されているのか、大坂屋敷はどのように関与しているのかを検討する。 また、大坂屋敷関係記録の調査の過程で、国元から送られた書状の中に、御用部屋による書状送付の一括管理体制には組み込まれていない藩外宛書状が存在していることが明らかになった。大坂屋敷の機能を明らかにするため、この藩外宛書状についても分析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全体として研究活動を十分に行うことができず、出張を伴う学会への参加や史料調査は行わず出張費等の支出はなかった。また、2021年度の前半はアルバイトの雇用なども困難であったため、これに係る使用額も低くなった。次年度には、文献購入費、複写費の支出、文献調査作業費、撮影した史料や紙焼の整理作業費、可能であれば出張を伴う学会への参加を見込んでいる。
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Research Products
(2 results)