2015 Fiscal Year Research-status Report
近世の小規模領有関係錯綜地域における領主ネットワークと地域社会に関する研究
Project/Area Number |
26770238
|
Research Institution | The Iida City Institute of Historical Research |
Principal Investigator |
千葉 拓真 飯田市歴史研究所, その他部局等, 研究員 (60719483)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 飯田藩 / 交代寄合 / 飯田 / 下伊那 / 領主 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、飯田藩および交代寄合信濃衆に関する史料の調査・収集に加え、昨年度に調査・収集を行った同史料に関する分析の成果を公表することが出来た。具体的には小笠原資料館や高森町歴史民俗資料館、東京大学史料編纂所等での研究資料の調査・収集を行った。研究成果の公表については、飯田市歴史研究所における定例研究会および名古屋大学近世史研究会において、「宝暦-天明期から寛政期における交代寄合信濃衆」と題する報告を行った。また飯田市歴史研究所において、コメンテーターとして静岡大学の今村直樹氏を招請し、「飯田・下伊那の領主たちと地域社会」と題するワークショップを開催し、「17世紀後半における飯田藩と信濃衆」題して報告を行った。 上述の成果により、これまで解明されてこなかった飯田・下伊那における領主たちの動向が明らかになりつつあり、近世の地域社会において領主たちの動向がどのような意味を持ったのか、という点について明らかにする上で基礎となる事実や論点を見出すことが出来た点に大きな成果があったといえよう。またワークショップにおいては、今村氏による熊本藩や駿遠地域との比較等を念頭においたコメントを踏まえた議論により、本研究の意味や方向性を再確認するとともに、新たな視点を得ることが出来たという点で非常に有意義であった。 また27年度は、飯田・下伊那の領主に関する史料以外にも、その比較対象として他地域における領主に関する史料を収集することも出来た。具体的には名古屋大学附属図書館や名古屋市蓬左文庫における高木西家および高木東家による史料の調査である。これらの調査によって、飯田・下伊那の領主を検討する上で、その比較対象となる領主の史料を収集することが出来た点で大きな成果があったといえる。 総じて昨年度以来の研究成果を公表でき、新たな史料を収集し、研究を次の段階へ進める上での準備が出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究成果を公表出来た点は大変重要な成果であり、またワークショップの開催により、今後の研究に必要な事例や論点を見出すことが出来た点は大変有意義であった。また史料の収集・調査についても、飯田藩や交代寄合信濃衆をはじめとして進展が見られ、他地域における領主の史料についても、調査を進めることが出来た点も重要な成果であったといえる。 ただし、飯田・下伊那地域における領主については、飯田藩や交代寄合信濃衆に関する史料の調査や研究成果の公表を行うことが出来た一方で、それ以外の領主については調査・研究を十分に行うことが出来なかった点が課題として残った。 しかしながら、飯田藩や交代寄合信濃衆に関する調査や史料の分析が進展したことで、これら以外の領主の問題についても論点や事例を見出すことが出来たこと、他地域へも調査・研究の範囲を広げることが出来たことは、重要な成果と言える。 上述のことから、一定度の課題は残ったものの、概ね従来の計画にそった形で研究を進めることが出来たと考えており、比較的順調に研究が進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、先に課題とした飯田藩や交代寄合信濃衆以外の地域における領主についても、史料の調査・分析を進めていきたい。またこれまでの成果の集大成の一つとして、飯田市において開催される地域史研究集会の中で、飯田藩の問題を地域社会とのかかわりの中で論じる報告を行い、自身以外の講演者や報告者等と議論を行うことで、これまでの研究成果をまとめ、研究の意義づけを図っていきたい。また地域社会とのかかわりについても、地域史研究集会における報告の中で言及できるよう、町方や在方の史料分析も合わせて行う予定である。これを基軸として、28年度の後半に研究の最終的なまとめに入りたい。 さらにこれと並行して、飯田・下伊那の領主たちが持った他地域との関係、特に飯田藩と京都が持っていた関係についても分析を加え、その成果を7月末に口頭で報告する予定であり、その際にはこれまで研究を続けてきた加賀藩などとの比較も行い、飯田・下伊那地域における領主の在り方を検討する上での材料とした。 以上の研究活動を踏まえた上で、飯田・下伊那地域における領主間のネットワークと地域社会とのかかわりを明らかにし、26年度以来の研究をまとめていきたい。
|
Causes of Carryover |
年度末から年度初にかけて、支払期日および金額が不明な必要物品を購入する必要が生じたため(インターネットオークションによる史料の購入)。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に平成28年度に必要物品(史料)購入し、次年度使用額の多くを使用している。若干の残額が生じたが、残りについては、書籍の購入費等に充てる。
|