2016 Fiscal Year Research-status Report
清朝中期の対外関係:「カントンシステム」再検討(1784-1833)
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26770239
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
豊岡 康史 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30712559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 清朝史 / 経済史 / 政治史 / アジア海域史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究計画を変更し、清朝のカントンシステムを中心とする対外貿易と国内経済の連関についての検討と、成果の学会での報告を行った。 平成28年8月には、宋代史明清史合同夏合宿:シンポジウム「空間的統合のダイナミズム―「中国」近世再考」において、「「緑営廃弛」と「近世」のおわりかた:言説と実態のあいだ」と題して報告を行い、19世紀初等の清朝の対外軍事力行使の実態と、その評価について総括し、辺境地域の実態と中央レベルでの政策、あるいはその評価のギャップを指摘したうえで、中国史上の転換点について再考の必要性を指摘した。また、平成28年12月には、京都大学人文科学研究所「転換期中国における社会経済制度」共同研究班において、「嘉慶”維新”の背景とその目的:景況と漢化」と題して報告を行い、米価・貿易収支・関税収入・中央政府財政収支のデータを解析して、19世紀初頭における米価差の変動に伴う景況変動が長江流域における治安状況と連関しており、従来の研究が指摘する対外貿易収支による清朝領域内への影響は、19世紀中葉(アヘン戦争時期前後)などに限定されることを指摘した。また、清朝領内において、18世紀を通じて漢人人口の比重が拡大する中で、清朝政府が長江流域に置ける景況変動に配慮した政策を策定するようになり、結果的に清朝の対外貿易最大の窓口であるカントンシステムの運用への清朝中枢からの関与が長江流域の状況を反映したものとなっていることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期調査はできなかったが、これまでに収集した史資料および、新たに公開されたデータなどを用い、これまでの研究成果の有用性を確認できるような、研究成果の公開が出来た。よって順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに収集した史資料および、新たに公開されたデータベースなどを用い、これまでの3か年の研究成果の総合を目指す。とくに、19世紀初頭のカントンシステムの運用実態を、清朝史あるいは世界経済の動きのなかに位置付けてゆく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた長期海外調査を行わなかったこと、および書店に注文した海外発行の書籍の一部が、年度内に調達不可能であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度請求額とあわせて、旅費・物品費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)