2016 Fiscal Year Annual Research Report
An interpretation of the Qur'an by a Chinese Muslim in the modern era
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26770241
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 竜也 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40636784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アジア・アフリカ史 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代中国のイスラーム改革派、イフワーン派の代表的人物で、20世紀前半に活躍した王静斎(1949年没)が、その漢語によるクルアーン注釈書『古蘭経訳解』において、スーフィズムに関する事柄を、どのように語っているか、を検討した。とくに、近代イスラーム世界においてしばしば批判にさらされた聖者崇拝の問題をめぐって、彼がどのような見解を表明しているかに注目し、その見解表明にあたって、彼が『古蘭経訳解』執筆のために参照したアラビア語・ペルシア語諸文献の記述をどのように取捨選択していたか、を考察した。それにより、王静斎が、スーフィズムをめぐる中国ムスリムの伝統的解釈や近代イスラーム世界の思想潮流に、どのように反応していたかを探り、イフワーン派による中国イスラーム改革の実態の一端に迫った。 結果、彼が、スーフィズムに親和的な解釈をほとんど採っていなかったこと、とくに聖者崇拝には激烈に反対していたこと、その批判の際には典拠として、20世紀になって中国に伝来したと思しき、サラフィー主義の先駆者アールースィー(1854年没)のクルアーン注釈『意味の霊魂(Ruh al-ma`ani)』(アラビア語)を利用していたことを、明らかにした。また、興味深いことに、20世紀以前から中国ムスリムのあいだに流布していた『明証の霊魂(Ruh al-bayan)』(アラビア語)や『高貴な贈り物(Mawahib-i `aliyya)』(ペルシア語)にみえる、聖者崇拝を必ずしも否定していないような言説を、王静斎が微妙に改変して、反聖者崇拝の権威的言説として援用していたことを、発見した。 以上に加えて、イブン・アラビー(1240年没)のスーフィズム思想にもとづく来世論が、19世紀の著名な中国ムスリム学者、馬徳新(1874年没)に取り入れられている一方で、『古蘭経訳解』には継承されていないことを確認した。
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Research Products
(5 results)