2016 Fiscal Year Research-status Report
近世~現代のタイ族移民ネットワークとアイデンティティ
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26770243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 雅志 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30638656)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タイ族 / 移住 / アイデンティティ / 越境 / インドシナ / SNS |
Outline of Annual Research Achievements |
文献調査と臨地調査の効果的な接合により,世界各地に離散するタイ族の移住史の再構築を行うとともに,現代にいたるタイ族のネットワーク化の動きとそれに伴うアイデンティティ変容の様態を解明しようとする本研究課題の3年目の実績概要は下記の通りである。 今年度は,前年度に収集した資料の分析を進めるとともに,研究計画中のサイバー空間における調査を重点的に実施した。調査に際しては,Facebook, Youtube , Instagramなどの各種SNSを主な調査対象とし,アメリカ,フランス,タイなどの空間的に拡散したタイ族コミュニティの間で,これらのSNSを用いながらいかなるネットワーク形成及びアイデンティティの再構築が行われているかについて検証した。 調査結果として,SNS利用者からの過去の記録写真の提供及びそれについての議論などを通じて,各地のコミュニティ間で,移住を含む民族の歴史記憶の再定義が行われている状況が明らかとなった。また,SNSを通じたベトナムのタイ族訪問ツアーが企画され,多数の人々が訪れることによって,サイバー空間と物理空間におけるネットワークがリンクし,今までサイバー空間におけるタイ族ネットワークへの参加度が低かった移住元のベトナムのタイ族がネットワーク化の動きに加わるようになるなど新たな現象が起きていることも確認することができた。 以上の研究成果について,1月の国際ワークショップにおいて“Tracking Routes to Heaven: Diaspora and Re-imagined Ethnicity of Tai Dam”と題する報告を行うなどした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度と本研究課題最終年度の予想されるエフォートを勘案し,本年度はサイバー空間での調査を集中的に実施した結果,近年のSNSの使用状況の変容と物理空間のコミュニティを越えたアイデンティティ構築との間に存する関係について重要なデータの収集,分析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況をふまえ,本年度はグローバルに拡散したタイ族コミュニティに大きな影響を与えてきたアイオワ州デモインのタイ族難民コミュニティの調査を行う予定である。これにより,サイバー空間におけるタイ族アイデンティティのネットワーク化状況と政治環境との関係について明らかにするとともに,アメリカの他の民族集団(Hmongなど)の難民社会との相互影響について分析する。 その上で,これまでの研究成果をAAS(予定)において発表する。
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Causes of Carryover |
当該年度と次年度のエフォート配分を考慮し,海外調査を次年度の研究計画に繰り込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査(アメリカ・アイオワ州の黒タイ難民コミュニティの調査)に充当する。
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