2017 Fiscal Year Research-status Report
近世~現代のタイ族移民ネットワークとアイデンティティ
Project/Area Number |
26770243
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 雅志 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 研究員 (30638656)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | タイ族 / 移住 / アイデンティティ / インドシナ / SNS / 観光 / 葬送儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献調査,臨地調査,インターネット(サイバー空間)調査の効果的な接合により,世界各地に離散するタイ族の移住史の再構築と現代におけるタイ族の再ネットワーク化とアイデンティティの変容を明らかにしようとする本研究課題の4年目の実績概要は下記の通りである。 今年度は,これまでに収集した資料(特に故郷を経て天へ昇る道程を示した葬送儀礼文書)の分析と,インターネット空間での調査を並行して行うとともに,9月には,タイ族の魂が天に昇る場所とされるベトナム・イエンバイ省ギアロを訪問し,海外からのタイ族観光客の動向と,住民との間でいかなる交流がなされているかについて調査を実施した。 以上の調査結果として,異なる地域で収集された葬送儀礼文書のいずれにおいても,ギアロが天へ昇る地点と記されており,儀礼での読誦を通じて同郷の同胞としての意識が共有されること,インターネット空間上での遠隔地コミュニティをつなぐ交流サイトの存在や観光を通じた人的交流の動きが,地域内でのタイ族のネットワーク化の動きを刺激し,国内の交流コミュニティサービス(若者同士の出会いを目的としたサイトも含む)の開設や交流イベントの開催が進んでいることなどが明らかになった。 また,これまでのタイ族の移住をグローバルヒストリーの中に位置付ける研究の成果について,ライデン大学で行われたグローバルヒストリー・ワークショップにおいて報告したほか,成果の一部をもとに執筆した論稿を収載した論文集が刊行された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インターネット上の交流サイトが各地域に新たに生まれてきたため,それぞれのサイトでの言論状況の調査に当初想定していた以上の時間がかかったが概ね必要な情報収集を行うことができた。他方で,今年度予定していたアメリカのタイ族難民コミュニティの調査が,現地協力者の都合と,代表者の所属機関の異動のために実現できず,やむをえず補助期間の延長申請をすることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
補助期間延長の理由となった未遂行の調査は次年度初めに実施する準備が整っているおり,その調査結果をもとに,最終的な研究総括及び成果発表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
海外調査(アメリカ・アイオワ州の黒タイ難民コミュニティの調査)を次年度に実施せざるを得なくなったためと、それに伴い最終的な研究成果発表も次年度に行う必要が生じたため。
|