2014 Fiscal Year Research-status Report
北インドのイスラーム聖地とムスリム・コミュニティ形成過程に関する研究
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26770245
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
二宮 文子 青山学院大学, 文学部, 准教授 (40571550)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南アジア史 / イスラーム / 聖者廟 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏期休暇を利用して、ラクナウ(インド共和国、ウッタル・プラデーシュ州)とアリーガル(同)での文献・フィールド調査を行った(2014年8月23日~9月14日)。ラクナウでは主にウッタル・プラデーシュ州公文書館(UP State Archives)を訪問し、1870-80年代におけるサーラール・マスウード廟の経済規模や、廟関係者が保持していた不動産・動産の情報とそれらに関する訴訟、イギリス植民地政府による廟の管理の進行を示す文書群を発見した。また、バフライチにあるサーラール・マスウード廟を訪問し、現在の廟の様子を観察、さらに同廟に派遣されている行政官Rizvi氏に、現在の廟の管理体制に関するインタビューを行った。アリーガルでは、アリーガル・ムスリム大学でムガル朝時代のスーフィーの伝記類の写本調査を行った。 ウッタル・プラデーシュ州公文書館で発見した文書は、当時サーラール・マスウード廟に集められていた寄進の年間総額や、それらの寄進を廟関係者がどのように分配していたかについての情報を含む。このような、聖者廟の経済的活動についての情報を含む史料を入手できる機会は少なく、今回獲得した文書も従来研究では用いられていないため、史料的価値は高い。ただし、これらの文書のみでは廟関係者の特定、関係者同士の関係性の把握が困難であり、現在その点を補う方策を検討中である。また、イギリス政府による廟の管理体制の整備については、サローンの事例との比較検討が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地協力者との予定が合わせられなかったため、調査地の一つサローンでの現地調査が実施できなかった。 また、ラクナウでの文書調査では、文書の分量が当初の見込みよりも多く、コピーや写真などでの獲得が出来なかったため、データの入力、解析に予想外に時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
ウッタル・プラデーシュ州公文書館で獲得した文書を最大限活用するために、不足している情報を補う調査を行う。具体的には、1870-80年代の廟の関係者を把握するため、再度ラクナウで文書調査を、またサーラール・マスウード廟で聞き取り調査を実施する。文書調査の対象としては、訴訟関連の記録が有用だと見込まれる。 また、現時点で利用できる情報については、本年度の南アジア学会などで発表を行い、論文を執筆する。
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