2014 Fiscal Year Research-status Report
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26770248
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
太田 麻衣子 国士舘大学, 文学部, 講師 (10713547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古代史 / 楚 / 漢 / 劉邦集団 / 国際情報交換 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、楚の東方への領域拡大を考古資料から探るべく、淮河・長江・銭塘江下流域から出土した戦国墓の発掘データを収集・分析し、学術論文としてまとめた。 従来の領域認識では、楚は戦国中期にはすでにこれらの地域まで支配を拡大していたとされており、そのため淮河下流域に位置する淮安から出土した運河村一号戦国墓は戦国中後期の境に造営された楚国の墓だとみなされていた。しかし、淮安出土の戦国後期墓や、長江・銭塘江下流域から出土した戦国墓と比較してみると、運河村一号戦国墓は楚国の墓とはいえないものであり、同墓造営当時の淮安はまだ楚の実効支配を受けていなかったとみるのが妥当である。楚がいつ淮河や長江の下流域を実効支配下においたのかという問題は、秦末に当該地域から挙兵した楚の勢力のルーツとも深く関わる問題であり、ひいては漢帝国の成立とも関わってくる問題である。秦末に楚の勢力として挙兵し、漢帝国を樹立した劉邦集団の中核を担っていた韓信は、項羽にも仕えていたことがあるのと同時に、淮安の出身でもあった。本年度はその淮安から出土した戦国墓の分析を手がかりとして、当地が楚の実効支配下に置かれたのは戦国後期になってからであり、きわめて短い期間しか楚の支配を受けていなかったことを明らかにした。これは淮安の人びとの帰属意識にも大きく影響する問題であり、従来のように劉邦集団を楚人中心の集団とみなす視点は改めるべきである。以上の研究成果はすでに学術論文としてまとめており、公刊されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、漢帝国成立の背景には楚文化を中軸とするひとつの大きな文化的まとまりが存在していたのではないかとみて、春秋戦国時代にかけて江淮地区に生じた文化的融合の過程を解明することを目的としている。 『史記』に「楚雖三戸、亡秦必楚」という記述があるように、反秦勢力の盟主は戦国楚の王族の末裔である懐王心であり、実際に秦を滅ぼし漢を樹立したのも項羽や劉邦といった戦国楚の故地から挙兵した人びとであった。そのため従来の研究では「楚人」が滅秦興漢の中核を担っていたとみなされてきたが、その「楚人」がいったいいかなるものだったのかについては、ただ戦国楚の末裔と単純に同一視されるばかりで、具体的に検討されてこなかった。そこで本研究ではまず秦末における楚と戦国楚とが似て非なるものであることを明らかにし、そのうえで両者をつないでいたのが楚文化を淵源とする文化の共有であったこと、また楚文化圏の拡大が漢帝国の誕生には不可欠であったことを立証しようとしている。 本年度の研究は、秦末の楚と戦国楚とが無条件に同一視される原因となっていた楚の東方への領土拡大について、従来の認識が誤っていたことを指摘したものであり、これにより秦末の楚と戦国楚とが異質な存在であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
秦末の楚と戦国楚とを結ぶべき戦国末期の楚については文献資料にほとんど記述がのこっていないが、そうした乏しい史料のなかからでも、戦国末期の楚にはそれ以前の楚とは異なる社会秩序が成立していたことがうかがえる。そこで今後は乏しい文献資料の穴を埋めるために、江東や寿春、広陵といった戦国末期の楚にとって重要だった地域における墓葬の変遷を追い、戦国末期の楚に起きた社会変動およびそれが秦末の楚に与えた影響について解明したい。
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Causes of Carryover |
年度末に調査旅行を行なったため、精算が間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究に必要なデータを収集すべく、墓葬や出土文字資料に関する書籍を購入するほか、データを整理・分析するために必要な機材やソフトウェア、および研究打合せや資料調査を目的とした旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)