2016 Fiscal Year Annual Research Report
Historical developments of official documents on stone inscriptions during the Song, Jin and Yuan period in China
Project/Area Number |
26770250
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
小林 隆道 神戸女学院大学, 文学部, 専任講師 (40727335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国史 / 史料学 / 文書研究 / 石刻「文書」 / 碑刻 / 江南士人 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となった平成28年度は、当初の研究計画に従い、特に国際学界における研究成果の発信とそれによる海外の研究者との協力体制の強化に努めた。 元代碑刻「玄妙観重修三門記」は、元代の書を代表する趙孟フの作品として誰もが知る非常に有名な書法作品である。そのため、これまでは美術史・書法史で考察対象とされるのみで、碑刻としての作成を巡る歴史的背景は十分に明らかにされていなかった。その「玄妙観重修三門記」をモノとして歴史学の立場から考察し、南宋末から元初にかけた江南士人たちの具体的動向を明らかにした。これは石刻「文書」が当該時期に展開し得た前提状況に関わる。この研究成果は国際会議での討論を経て論文として刊行した。 また、従来利用されていた史料中の石刻「文書」は、最終的に石碑に刻まれたものしか存在せず、紙の文書が発給される以前或いは石に刻まれる前に政府と寺観がやり取りをした文書史料はなかった。しかし、本研究では道教経典を収録する『道蔵』中に、文書発給申請から石刻「文書」作成までの一連のプロセスで使用された文書記録を発見し、文書受領者側が公文書をどのように利用したのかを具体的に明らかにした。更に、政府と寺観のやり取りにおける実際の文書伝達が、文書に記される経路と異なることも指摘した。 そして、上述の成果を、対象時代や分野を異にする研究者が多く集まる国際学会において発表できたことは本研究において意義が大きい。2015年度の学界動向を分析する論文で、従来の「縦割り」のディシプリンを克服し既存分野を横断する研究が現在求められていることを指摘したが、上述した本研究の成果はその動向に合致したものである。そのような研究では多分野の研究者間での協力が必要となる。本研究では、国際学会における学術交流の中で、例えば道教研究者といった史学分野にとどまらない研究者との協力体制の構築を進めることができた。
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