2014 Fiscal Year Research-status Report
北アフリカ出土碑文に見る「ローマ人」意識の生成と変容
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26770254
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
大清水 裕 滋賀大学, 教育学部, 講師 (70631571)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古代ローマ / ラテン碑文 / 北アフリカ / ローマ人 / 皇帝礼拝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に沿って、本研究テーマに関する予備的な史料調査を進めたほか、北アフリカにおける「ローマ人」意識の生成と変容に関する先行研究についても知見を深めた。 予備的な史料調査にあたっては『ラテン碑文集成(CIL)』や『碑文学年報(L'annee epigraphique)』といった活字メディアを中心に進めたほか、近年整備の進んでいるインターネット上のデータベース(eagle project等)も活用した。そうした成果の一端は、年度末に京都大学で開催されたシンポジウム「西洋古代史研究における碑文とパピルス――利用の現状と可能性、課題をめぐって」(古代史研究会第2回春季研究集会)での報告にも活かされている。 先行研究に関する知見の一部は、『滋賀史学会誌』16号に寄稿した「〈研究紹介〉北アフリカに見る古代末期研究の展開:J.Conant, Staying Roman, Cambridge, 2012を中心に」(2014年7月、104-108頁)として公表されているほか、2014年10月5日に福島大学で開催されたシンポジウム「東北史を開く――比較の視座から」(史学会125周年事業リレーシンポジウム、東北史学会・福島大学史学会との共催〉でのコメントとしても発表されている。近年の研究では、古代の北アフリカにおける「ローマ化」に対する批判的な見方が目立つようになってはいるが、肝心の「ローマ人」自体に関する言及は限られており、研究の必要性が改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は北アフリカにおける「ローマ人」意識の生成と変容を測る指標として皇帝礼拝に関する碑文史料の予備的な調査をおこなった。これは次年度以降の現地調査の実施に不可欠なものであり、研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、碑文史料の現地調査が大きな役割を果たすものと想定しており、研究計画でも2年目にチュニジア、3年目にアルジェリアでの現地調査を予定していた。 しかし、今夏調査を予定していたチュニジアのバルド美術館で年度末の3月に痛ましいテロ事件が発生したため、今夏の現地調査については中止も含め再検討している段階である。今後の事態の推移にもよるが、北アフリカでは比較的治安の安定しているモロッコでの現地調査、あるいはルーヴル美術館など北アフリカ以外に移送された碑文史料の調査に内容を変更し、今後の研究の推進を図ることも検討したい。
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Causes of Carryover |
海外からの書籍購入に時間がかかり、年度内に納品されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
注文した書籍の支払いに利用。
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