2016 Fiscal Year Research-status Report
北アフリカ出土碑文に見る「ローマ人」意識の生成と変容
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26770254
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
大清水 裕 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70631571)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / 北アフリカ / 皇帝礼拝 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度実施したモロッコでの現地調査の結果をもとに学会発表を行ったほか、その内容を速報の形で公表することもできた。まず、6月に首都大学東京(南大沢キャンパス)で開催された第40回地中学会大会において、「バナサ青銅板に見るマルクス・アウレリウス治世の北アフリカ」と題して研究発表を行った。この発表においては、従来、ローマ文化にあこがれる原住民の部族長へのローマ市民権付与を記録した銘文とされてきたバナサ青銅板について、青銅板の出土地と同時代の現地情勢に基づき、再評価を試みた。その内容は、7月に発行された『地中海学会月報』391に短報が掲載されており、学会ホームページでも閲覧することが可能である。また、その詳細については鋭意論文の執筆を進めており、出来るだけ早く公表できるよう努めたい。 それと並行して、北アフリカにおけるローマ皇帝礼拝の始まりと進展について調査を進めている。北アフリカにおいても、アウグストゥスによる帝政の確立とほぼ同時に皇帝礼拝の記録が見られるようになるものの、同じく西方に属するガリアやヒスパニアのように帝室主導で進められたとは考えにくい。北アフリカでは、その後、ウェスパシアヌス帝期に大きな変化があったとされている。そのような先行研究での指摘についても、その根拠となる碑文史料の内容やその出土状況といったコンテクストを踏まえながら、見直しを進めた。その内容についても科研最終年度となる平成29年度中に取りまとめたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度については、昨年度の現地調査に基づき学会発表を行ったことを踏まえ、おおむね研究は順調に進展したと判断している。ただし、地中海周辺各国、とりわけ北アフリカ諸国の治安の回復が遅れていることから、今年度は予定していたアルジェリア(あるいはチュニジア)での現地調査の実施を見送った。本科研の最終年度となる新年度に充実した現地調査を実施できるよう、海外調査に向けた国内での予備的な調査を進めており、最後まで研究の進展に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
科研最終年度となる平成29年度には、「北アフリカ出土碑文に見る「ローマ人」意識の生成と変容」という研究課題に沿う形で、北アフリカにおける皇帝礼拝の成立と進展について、現地で発見された碑文史料に基づき、研究成果をまとめていきたいと考えている。そのためにも、今年度実施できなかった現地調査をチュニジアおよびローマで実施する予定である。 また、研究課題に関連して、ローマ帝国支配下の北アフリカにおける文化変容に関する近年の研究動向をまとめて公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
北アフリカ諸国の治安回復が遅れていることから,今年度の現地調査を断念したことに伴い,旅費相当額を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,現地の治安状況を慎重に見極めつつ,現地調査を実施し,相当する金額を旅費に充当したいと考えている。
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