2014 Fiscal Year Research-status Report
近代イギリス官僚制度改革の国際的影響に関する総合的研究
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26770255
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水田 大紀 大阪大学, 文学研究科, 助教 (40632328)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近代化 / 官僚制度 / イギリス / 女性 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は助教職の任期満了年にあたったこともあり、業務の総括や引き継ぎ準備などのため、夏・冬季休業期間中に予定していた海外での史料調査を行うことができなかった。そのため研究計画の一部を入れ替えて、2年目以降に実施予定であった国内での調査・研究に主に行うこととした [研究計画では「Ⅱ. 改革を助長した社会思想についての比較史的分析」に該当]。 近代官僚制度をめぐる社会思想については、国内で明治期に発刊された「立志」ものの収集にあたる一方で、近代イギリス行政革命における科学的思想について報告し、研究者と意見の交換を行った [「19世紀イギリスの行政革命について――官僚制度改革の展開――」、科研研究会「近代イギリスにおける科学の制度化と公共圏」(代表:大野誠、2015年1月10日)]。また19-20世紀の東アジア経済に関するワークショップで、当該地域の国際関係にイギリスの思想が果たした役割について評釈した [「コメント――西洋史学の立場から」、次世代研究者育成ワークショップ2014(社会経済史学会、2014年9月14日)]。 一方で「近代化」の模索という論点に関しては、改革の目玉となった女性労働力の活用について検討し、学会等で発表した [「アダムなきエデン――近代イギリスの逓信省における性別役割分業の機能について――」、第19回ワークショップ西洋史・大阪(大阪大学西洋史学会、2014年5月17日)& 関西イギリス史研究会(2014年8月9日)]。加えて、論説「ターザン――文明化する幸せ、文明化しない幸せ」、藤川隆男・後藤敦史(編)『アニメで読む世界史2』(山川出版社、153-172頁、2015年1月刊)を執筆し、ディズニーのアニメ映画『ターザン』をモチーフに、アフリカにおける「近代化」=「文明化」の伝播について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように、スケジュールを一部入れ替えて実施したため、申請時の計画は幾つかの点で変更せざるを得なかったが、「おおむね順調」と自己評価した理由は、官僚制度改革の目玉のひとつであった女性労働力の活用についての調査に関して十分な進展があったからである。また日本における「立志」ものの調査と収拾は今後も継続する必要があるが、海外への「近代化」の伝播についても、「ターザン」の分析を利用して、ひとつの鋳型を検討することができたと考えている。そのため計画全体としてみれば、初年度の研究としてはおおむね必要な成果を得ることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた研究成果を投稿論文として発表し、さらに二年目の計画内容と併せて、イギリス官僚制度改革の国際的伝播について調査・研究を行う。特に、男女官吏の職業観や就業観の違いを中心に、制度改革を経験することで変化した現役官僚たちの価値観について考察を進めたい。これらに対する論究は、各国政府からの情報フィードバックも含めて官僚制度改革の全体像を検討することを通じてイギリス側の官僚たちの改革体験と、それによる意識の変化という視点から、「近代化」の伝播の諸相を捉える契機になると考えている。この目的を達成するためには、各史料の収集と歴史学的な分析が基本的な研究手法となる。そのため、二年目は London School of Economics 図書館や大英図書館、Royal Mail Archives に収蔵されている史料の収集、調査に重点を置く予定である。
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