2014 Fiscal Year Research-status Report
近代ドイツにおける食肉観の科学化―動物・食品・獣医―
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26770260
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
光田 達矢 慶應義塾大学, 経済学部, 講師 (90549841)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食肉 / ドイツ / 医学 / 獣医学 / 肉屋 / 健康 / 動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代社会では、人間が口にする肉の「安全性」を検査してから消費者へ食べ物として届けられるのが当たり前である。3つの「危険性」が食肉に潜むからだ。1つは、牛をはじめとする畜産動物が患う病気が人間に感染する恐れ。2つは、畜産動物がと畜される場で「汚染」する可能性。3つは、小売業や消費者の扱い方により商品が「腐敗」する危険性である。これらの「危険性」を科学者が検査するという国家システムが整うのは意外にも遅い。20世紀に入ってから近代的な食肉検査体制が、ヨーロッパを中心にようやく普及する。本研究は、草分け的な役割を果たしたドイツに焦点をあて、食肉観の「科学化」が起きる原因を探るものである。
平成26年度は、資料収集、学会参加、論文執筆に時間を割いた。3つの分野にまたがる研究のため、食、動物、科学の歴史研究をまず整理することから取り掛かった。学会では、それぞれの分野の専門家と議論をする機会を得た。とりわけ、医学・獣医学の歴史研究に従事する海外の研究者と意見交換を積極的に図り、4回にわたる海外出張を通して、国際的な研究動向の中に本研究を位置づけることができた。これらの活動と並行して、資料調査も実施した。ベルリン、ミュンヘン、ドレスデン、デッサウの図書館および公文書館を訪れ、貴重な一次資料を発掘することに成功した。これらの資料を分析し、2つの国際学会にて研究成果の一部を発表し、多様な研究者よりフィードバックを得た。現在、1本の論文を国際的な学術誌にすでに投稿し、2本目の論文の執筆に取り掛かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画より早く研究が進展している。平成26年度は、2次文献や出版資料を中心に研究を進める計画だった。ところが、9月にその調査は実質終了したため、一次資料を求め、3月には前倒ししてザクセン州の公文書館を訪れた。その際、多くの行政資料の収集を行った。また、当初の計画では、3つの学会への参加を計画していたが、合計5つの関係する国際学会に出かけた。直接関係するテーマでは、発表は2回に留まったが、動物や食に関する発表を含めば、合計5回発表したことになる。これらの発表で得た知見は、本研究にも活かされている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、一次資料を中心に、本格的な研究活動を行う。学会への参加も2回程度に抑え、論文執筆に力を入れる。現在、執筆中のものも含め、少なくとも2本の論文を国際的な学術雑誌へ投稿する。当初の計画と異なり、関連する資料を、デュッセルドルフではなく、ベルリンやドレスデンで発掘することにする。食肉に関する問題を扱う資料がより多く残っているのが、その理由である。
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