2014 Fiscal Year Research-status Report
東アジア出土品から見たシルクロードの織物技術と文化交流
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26770272
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
村上 智見 帝塚山大学, 文学部, 特別研究員(PD) (70722362)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / モンゴル / 韓国 / 考古学 / 染織 / シルクロード |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジアにおける調査により、シルクロードの織物技術と文化交流の実態をより詳細にすることができた。 韓国慶州出土の6世紀織物の分析を行った。中国製と非常によく似ているが、類例が少なく検証が難しい。今後、資料の増加を待って半島独自の特徴を今後明らかにしていく必要がある。 モンゴルでは、匈奴、突厥、ウイグル、契丹、モンゴル帝国期の織物調査を行った。その結果、各時代の織物の特色と、地域的な技法、そして盛んな東西交流を明らかにした。匈奴では中国や西方からも織物がもたらされていたことが分かった。さらに従来、匈奴は織物製作技術を持たないと言われていたが、匈奴で製作されたと考えられる独自の技法も明らかにした。突厥ではビザンチンや中国などから織物を得るとともに、シルクロードの各地でよく見られる織物も多く確認できた。その中には我が国の正倉院と同一の錦も含まれており、年代が明らかな碑文が共伴していることから、正倉院錦の年代が明らかになったことは重大な成果であった。ウイグル墓出土品調査では、中国国内でよく見られる遼代の特徴を持つ織物類を確認することができ、9~10世紀であることが判明した。契丹墓出土品調査でも、遼代に特徴的な織物を確認することができた。モンゴル帝国期のモンゴル帝国期の織物調査では、金糸には和紙の台紙を用いるものの他、動物の腸膜に金箔を貼る技法も確認できた。西方から移住させられた織工によって生み出された独自の技法、「ナシチ織り」も確認した。これらはモンゴル帝国期に特徴的な織物として盛んに中国出土品研究が行われているが、モンゴル出土品はほとんど研究されてこなかった。さらに、従来知られていた金糸技法(平金糸・撚金糸)の他に、絹糸一本一本に直接金属(金泥あるいは箔)を塗布する技法を、電子顕微鏡による観察で明らかにした。日本に舶載された金襴の製作地を探ること上でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予想していなかった研究機関(釜山大学、モンゴル科学アカデミー歴史学研究所、モンゴル国立歴史博物館、国立カラコルム博物館、モンゴル国立大学など)、および研究者から協力を得られたことから、予想を上回る成果を得られることができた。幅広い時代・地域をカバーする資料を得ることができ、データの充実に繋がっている。さらに、関係者側の親身な協力も、計画以上に研究が進展している理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き調査を実施するとともに、これまで収集したデータから文様・技術・材質など織物の各時代・地域的特徴を明らかにした上で、製作地の特定を試みる。さらに、どのような織物がどこで製作され、どこへ流通したのかについて詳細に検討する。さらに事例研究を総合し、これまでの研究成果と比較する。すでに調査が行われ、詳しいデータが公表されているものについても併せて検討することとする。 さらに西アジア・中央アジア・日本との比較を試みる。これまでのシルクロード織物の先行研究、および申請者がこれまでに行った研究データとの比較を行い、最終的にシルクロードの織物技術と文化交流としてまとめる。
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Research Products
(2 results)