2014 Fiscal Year Research-status Report
米国における社会的包摂を重視した災害リスクガバナンスの展開と課題
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26770280
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
小田 隆史 宮城教育大学, 教育復興支援センター, 准教授 (60628551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 災害 / 自主防災 / 合意形成 / レジリエンス / 脆弱性 / インクルーシブ / 災害弱者 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる「災害弱者」への対応について都市防災管理にて重要視されはじめて以降、いくつかの事例研究がみられるが、それらは行政主導の政策制度の枠組や、異なるステークホルダー間の連携関係を図式的に説明したもの等に変調しており、脆弱な人々が事前(発災以前)に制度政策形成に参加する過程や合意形成をめぐる諸課題について、ミクロに検討した地理学的な研究は寡少である。そこで本研究では、従前の都市社会ガバナンスに関する研究を発展させつつ、災害に脆弱な広義のマイノリティによる防災への参加に焦点を当て、災害弱者の包摂過程やその課題を明らかにする。アメリカ合衆国都市での実証を通じて、コミュニティ防災の近年の実態や課題を把握し、多元的背景を有する市民によるインクルーシブな災害リスクガバナンスの実態、防災上の効果、実施における課題や、それらが都市空間の再編成に与える影響等につき地理学的視覚から検証していくことを目的としている。 具体的な調査地として、過去に大きな災害を経験し、リスクガバナンスへ弱者を包摂すべく試行錯誤が繰り返されている米国カリフォルニア州サンフランシスコ及びルイジアナ州ニューオーリンズを選定した。まず、インクルーシブな防災に関する災害関連研究、地理学的研究、及び国際的な政策に関する議論に関する文書等の収集及びレビューを行った。また、所属センター教員をはじめ、近隣の防災関係機関、都市計画コンサルタント会社関係者と、包摂型防災の課題等について議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、2015年3月に当地・仙台市において第3回国連防災世界会議が開催されることとなり、防災研究関係者とともに、同会議における発表やシンポジウム開催の準備に取り組むこととなった。特に、所属先大学センターにおいてその取り纏め役を任されたことから、本研究にかかる現地予備調査を次年度初頭に延期することを余儀なくされた。しかし、同防災世界会議においても、本研究の主要テーマとする「包摂を重視した防災」(インクルーシブな防災)を、重要な課題の一つとして取り上げて議論されたこともあり、関係テーマに関する情報の収集や、関係者とのネットワーク構築を、当地、仙台にて効果的に実施することが出来た。また、年度目標である、必要な文献の収集及びレビューは、予定通り行うことが出来た。したがって、現地調査を年度を超えて4月に見送った点で若干の遅れがみられるが、全体としては効果的な情報収集及び文献レビューを実施出来ていている。
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Strategy for Future Research Activity |
年度当初に実施する事前調査、収集資料を踏まえて、聞き取り先や調査項目を明確化して、当初の年度計画通り、研究を遂行していく。特に、第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」及び関連文書においても、「女性と防災」をはじめとする、多様な主体を包摂する防災に関しての、国際的な防災実務者等における関心の高まりもフォローした上で、必要な現地調査を実施し、結果を、学会・研究会で討議して、論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末に、本研究テーマにも関係する、防災関係の国際会議が仙台市で開催され、関連会議の開催に従事したため同会議が終わるまで、本研究にかかる現地調査を延期せざるを得なかった。そのため、旅費を多く計上していた本研究費の大半は未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度開始直後の、4月中旬から下旬にかけて、延期していた現地予備調査を行い(既に、本報告書執筆時点で実施済)、当該経費の多くを使用した。残額は、当該予備調査で特定した必要文献、データの購入等に充て、引き続き、効果的な経費の執行につとめたい。
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