2014 Fiscal Year Research-status Report
市民社会を支える理念とモラリティ:スロヴァキアの第一世代のNGOを事例として
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26770294
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
神原 ゆうこ 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50611068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 市民社会 / モラリティ / NGO / 国際研究者交流 / スロヴァキア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1989年の体制転換時に既存の価値観の崩壊を経験したポスト社会主義国であり、現在はEU加盟国であるスロヴァキアの地方都市をフィールドとし、NGO活動に関わる人々が体制転換後構築してきた理念とモラリティのあり方を明らかにすることが目的である。NGOに関わる現地の人々の動機はそれぞれ現実的な個別の事情に即したものであるが、資金調達のためのプロジェクトの準備や情報交換を通して市民社会を支える理念は内在化され、再生産されると考えられる。 初年度である今年度は、市民社会を支える理念に該当するものは何かということに関して、理論的な探究に努めた。本研究代表者はこれまでもスロヴァキアでフィールドワークを行ってきており、まずはこれまでの研究で得られたデータを再検討することで、今後の調査の焦点を絞ることを目指した。それらの具体的な成果は別紙の研究実績に該当する。このような準備の上で行った今年度のフィールドワークでは、中部スロヴァキアのB市に加え、東スロヴァキアのK市でも、市民活動の状況について、とりわけ東欧革命以降の動向に関して聞き取り調査を行った。今回は、市民団体に加え、体制転換直後から社会福祉分野の活動に存在感のあるキリスト教教会関係者へのインタビューや活動の様子を参与観察することができ、非常に有意義であった。また、東欧革命と市民活動というテーマは、社会主義時代から自主労働組合である「連帯」の活動が盛んであった隣国ポーランドにおいても注目されており、ポーランドの一大文化人類学拠点であるヤゲロー大学の文化人類学者に、自分の研究を紹介し意見交換する機会を得ることができた。こちらは来年度以降、国外での研究成果の発表をするために、非常に重要な示唆を得ることができ、大変有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の第一次調査では、もともと中部スロヴァキアB市でのフィールドワークのみを予定していた。しかしながら、本研究テーマとして第一世代のNGOと絞っているので、調査対象者が一都市では限られていること、また有力なNGOほど他都市との連携が強いことから、第2次調査以降の準備として、東部スロヴァキアK市でのインタビュー調査の足掛かりをつかむことができたのは想定以上の達成であった。ただし、調査期間が限られているため、残念ながらアポイントを取ることができなかった団体もあり、次回以降の調査で再度のインタビューを試みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
スロヴァキアにおける第一世代のNGOを考える際に、宗教団体の位置づけをどう考えるかが、当面の課題である。スロヴァキアにおいてはNGOと宗教団体の教会はあまり明確ではない。また市民的倫理がキリスト教的価値観に翻訳された語りもしばしば耳にする。宗教人類学的な知見を今後は取り入れていきたいと考えている。2015年にIUAES(国際文化人類学・民族学研究大会)での報告を予定しているが、以上のことを考え、宗教人類学のカテゴリーにエントリーしている。
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