2015 Fiscal Year Research-status Report
市民社会を支える理念とモラリティ:スロヴァキアの第一世代のNGOを事例として
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26770294
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
神原 ゆうこ 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50611068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 国際研究者交流 / スロヴァキア / NGO / 市民社会 / モラリティ / 民族誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、価値観の崩壊を集合的に経験したポスト社会主義国であり、かつ現在のEU加盟国であるスロヴァキアの地方都市をフィールドとし、NGO活動に関わる人々が構築してきた理念とモラリティのありかたを明らかにすることを目的としている。 本年度は2年目であり、昨年の第1次調査の成果を踏まえ、昨年と同様中部スロヴァキアのB市にて第2次調査を行った。これまでインタビューのアポイントがとれなかった、地域振興NGOや市の下部組織としてNGOとの連携を図るコミュニティセンターの職員へのインタビューに成功したのは大きな収穫であった。また昨年から注目している宗教団体の調査も順調に進めることができた。宗教に関する研究は、申請者にとってここ近年始めた新しい試みであるため、2015年7月の国際人類学・民族学連合中間会議にて宗教人類学者とともにパネル報告を試み、今後の研究展望について重要な示唆を得た。世俗的なNGOにかかわる現地の人々の個別の事情は現実的なものであり、資金調達のための情報交換やEUプロジェクトとの関わりを通して、市民社会を支える理念は内面化され再生産されている。その一方で、宗教団体も「市民社会」や「民主主義」という言葉こそ用いないものの、非常に近い活動を行っている。1980年代後半の民主化運動に宗教者も関わっていたという歴史的経緯を考えれば、この現象は不思議ではないが、現在両者の接点はほとんどない。世俗的なNGOについては、今年度出版した単著にその考察の成果を取り込んでいるが、宗教団体の社会貢献活動についての考察はまだ不十分な点があるため、ひきつづき考察を深めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、中部スロヴァキアのB市でのNGOと社会貢献活動を行う宗教団体へのインタビューと参与観察を行うことができた。国際学会での報告も予定通り行うことができ、研究は順調に進んでいる。研究成果のうち、世俗的なNGO活動に関するものの一部は今年度刊行した図書のなかで言及でしたので、宗教団体に関する考察を加えた論文を執筆し始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は、国際学会での報告とそれに伴う意見交換から、次のプロジェクトの方向性を探ることに加え、論文として研究成果を形にすることを目指したい。折しも勤務校より在外研修の機会を得ることができたので、最終的な補足調査を行いつつ、論文執筆に専念したい。
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