2016 Fiscal Year Research-status Report
ピースワークの人類学的研究―中央アジア南部の刺繍づくりからみる女性の生活戦略
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26770295
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
今堀 恵美 首都大学東京, 人文科学研究科, 客員研究員 (50600821)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化人類学 / ジェンダー / ものづくり / 社会人類学 / 中央アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の今年度、研究従事者が0歳児の育児に従事したため、中央アジアでの調査は行わず、ピースワークをめぐる日本におけるデータ収集と理論的考察、参与観察に集中した。 昨年まではピースワークが個人で販路確保が困難な既婚女性が自ら事業家となることよりもリスクが少ないピースワークを選好する、という側面を指摘した。今年度はピースワーク従事者と事業家の相互扶助的な側面に着目した参与観察を行い、理論的考察を行った。 具体的には出産を経験したにも関わらず、非常勤講師および客員研究員という身分だった研究代表者は育児休暇が全く取得できないにも関わらず、キャリア継続のために出産半年後に仕事を開始した。その間、子どもを保育園に入園させたかったが、叶わずにやむなくパートタイムのファミリーサポートを利用した。そのファミリーサポートに従事する女性たちもいわば「ピースワーク」従事者であると考え、彼女たちを対象に参与観察を行った。ファミリーサポートとは市役所など公的機関が仲介し、援助会員が請負で子供を自宅に預かり、時間に応じて利用会員が賃金を支払うをいうものである。彼女たちの活躍は保育園の開園前開園後といった保育園サービスが提供できないニッチを埋めるものであり、利用会員はキャリア継続を保証するための安全弁となっている。一方、援助会員からすれば今まで自分がキャリアを積んできた「子育て」というスキルを活かして収入を得、尚且つ仕事場所が自宅であるため、自らの家庭での役割も果たせるというメリットを享受している。 上記のファミリーサポートの事例から理解できたのは、既婚女性が運営するピースワークでは既婚女性のニーズに見合った援助がスムーズに行われやすいという点に比してピースワーク特有の社会的認知度の低さ(無認可保育園利用に比べて、ファミリーサポート利用は保育園申請のポイントで不利)があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記したように、研究代表者が育児に従事していたため、中央アジアでのフィールドワークは不可能であった。したがって当初の計画を大幅に変更させて研究を継続せざるを得なかった。だが幸いにも子どもをファミリーサポートを預けて仕事に復帰したために、ファミリーサポートを「ピースワーク」として参与観察する機会に恵まれ、新たな視座を生み出せたことは一つの成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は日本で蓄積したピースワークに関する知見を中央アジアで検証してみたいと考えている。特に工芸の請負だけではなく、女性が仕事をする上で「見えない」ニーズをピースワークが担っているのが、日本だけではなけなのか、それとも中央アジアでもそうなのかを検証していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は出産育児を担っていたため、予定通りの海外調査を行わず、過去の資料整理に研究活動が集中したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は海外調査を2回実施することで研究活動を予定通りに進めていきたい。
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Research Products
(1 results)