2014 Fiscal Year Research-status Report
ポスト「和解」時代におけるニュージーランド・マオリと都市の先住化
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26770296
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
深山 直子 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (90588451)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先住民 / オセアニア / ニュージーランド・マオリ |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュージーランドでは、1990年代以降はマオリ社会と政府の間で、植民地主義的収奪を巡って、司法・行政的手段を通じた「和解」が進展してきた。この結果、マオリ社会は、「和解」の要件として政府から諸々の権利や補償金を獲得し、ポスト「和解」時代を迎えつつある。本研究の目的は、このような時代背景のもと、都市というグローバルかつローカルな場に生きるマオリ集団そして個人が、多様な形態の先住権を元手に、都市の土地や環境に対して行う諸実践の実態を明らかにすることである。
初年度は、オークランド周辺域の植民地化史を捉えた上で、オークランドを拠点とするンガーティ・ファートゥア・オーラケイを始めとする部族集団による司法・行政的手段に基づく資産・権利回復運動の歴史を再構成するために、基礎的史資料の収集を行った。 また、1991年以降、部族集団がオークランド中・南部において、土地の所有権や利用権さらに補償金を活かして実施・計画している市街地再開発、土地の利用権や自然資源の利用・管理権を活かして実施・計画しているマヌカウ湾沿岸部での環境保全や点在するマオリ史跡での環境保全及び観光業といった実践について、現地調査を実施し、基礎的データの収集を行った。 加えて、オークランド南部の都市マオリ・コミュニティにおいて、若年層を主たる対象に複数回にわたるフォーカス・グループ・インタビューを実施し、マオリ・アイデンティティに関する聞き取りを行った。 さらに、研究対象をオーストラリア東岸部の都市におけるマオリ・コミュニティにも拡げる可能性を探るべく、シドニーとメルボルンを中心に巡検を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を短縮せざるをえなかったことや、現地の研究者と相談のうえで部族集団からの正式な調査許可を得ることを断念しつつあることから、当初の研究実施計画を変更した部分があったが、その一方で次年度以降の計画を前倒しした部分もあり、総合的にはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
オークランドの都市化史とりわけマオリの中・南部への移入動向を捉えた上で、部族集団から距離をとるマオリ集団あるいは個人によって都市に展開した、先住民としての地位・権利獲得並びに文化活性化運動の歴史を再構成する。その上で、相対的に歴史が長く凝集性が高いオークランド南部の都市マオリ・コミュニティの形成史を明らかにする。さらにそれらコミュニティによる観光業、自給的耕作、環境保全実践の実態を明らかにする。同時に、オーストラリア東岸部の都市に一時的あるいは永続的に移住しているマオリに関して、基礎的史資料の収集を予定している。
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Causes of Carryover |
研究協力者や協力機関の好意により、調査研究に必要な史資料や道具を借り受けたり譲り受けたりすることできた。また場合によっては、人件費・謝金の受領を拒まれたこともあった。そのため、当初の計画よりも物品費、人件費・謝金、その他の支出が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おおよその計画として、物品費に100,000円、旅費に600,000円、人件費・謝金に100,000円、その他に50,000円を使用する予定である。
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