2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト「和解」時代におけるニュージーランド・マオリと都市の先住化
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26770296
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
深山 直子 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (90588451)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先住民 / オセアニア / ニュージーランド・マオリ |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュージーランドでは、1990年代以降はマオリ社会と政府の間で、植民地主義的収奪を巡って、司法・行政的手段を通じた「和解」が進展してきた。この結果、マオリ社会は、「和解」の要件として政府から諸々の権利や補償金を獲得し、ポスト「和解」時代を迎えつつある。本研究の目的は、このような時代背景のもと、都市というグローバルかつローカルな場に生きるマオリ集団そして個人が、多様な形態の先住権を元手に、都市の土地や環境に対して行う諸実践の実態を明らかにすることである。
2年度目は、「和解」時代からポスト「和解」時代にかけてのマオリ社会の運動や動向と、それに対応した政府の施策を巡って、マジョリティであるヨーロッパ系住民が中心となって発信した批判的意見を先行文献資料から明らかにし、それらについてアイデンティティ・ポリティクス、脱植民地化、ネオリベラリズムといった鍵概念を切り口にして考察を進めた。 また、都市マオリ・コミュニティの若年層を主たる対象に行ったフォーカス・グループ・インタビューの結果を分析し、ポスト「和解」時代において「上から」強化されつつあるマオリ・アイデンティティとは一線を画した、オルタナティブなアイデンティティの表出を指摘した。さらに、そのことを「血」、「系譜」、「外見」といった観点から論じた。 さらに、植民地時代に遡って、ヨーロッパ系住民によるマオリの像やイメージの構築、国勢調査におけるマオリの「測り方」の変遷に関しても分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
諸事情により海外出張が叶わず、ニュージーランドにおける現地実態調査と文献史資料調査を実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目には、ニュージーランド渡航が叶わなかった半面、入手済みの先行文献資料の読み込みが進み、マオリ社会を考察するための新たな切り口を見出すことができた。このことを踏まえたうえで、当初2年度・最終年度に計画していた研究を推進する。すなわち、国内では、オークランドの都市化史、及び非部族系マオリ集団・個人の地位・権利獲得並びに文化活性化運動の歴史に関する文献史資料調査を行う。またニュージーランド・オークランドにおいては、都市マオリ・コミュニティの形成史、観光業と自給的耕作、及び環境保全に関する現地実態調査を行う。
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Causes of Carryover |
諸事情により海外出張が叶わず、ニュージーランドにおける現地実態調査と文献史資料調査を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初2年度・最終年度に計画していたニュージーランドにおける現地実態調査と文献史資料調査を進める予定である。
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