2015 Fiscal Year Research-status Report
中国における家族法のジェンダー構造に関する比較法学的研究
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26780001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
李 妍淑 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 講師 (90635129)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 家族法 / ジェンダー / 多様性 / 中国 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に整えた研究環境および人的ネットワークを利用し、中国・台湾・韓国の家族法制度全般に関する文献資料の収集やインタビュー、学会での意見交換を行った。研究課題への多方面からのアプローチを通じて、それぞれの制度にみられる特徴を一定程度掴むことができた。すなわち、いまだにトップダウン式の保守的な法実践が行われている中国に比べて、台湾はこれまで男女間のみを対象とする婚姻そのものに疑いの目が向けられ、家族法の抜本的な改革が民間団体の強い推進により行われているという特徴がみられた。韓国においても近年性的マイノリティの家族形成の問題が公の場で議論されるようになってはきたが、依然として保守的な面も保っている。このようにジェンダー視点からの家族法制度への再検討は、いずれの国でも意識されてはいるものの、社会的・政治的体制の違いにより異なった動きがみられる。 文献資料としては、主に書籍や電子ジャーナルや所属機関のデータベースを中心に利用したが、インタビューについては、中国、韓国、台湾に赴き学会(研究会)参加を兼ねて効率的に行った。前半は、華東政法大学と上海大学により共催された婚姻家庭法研究会に参加し(8月)、後半においては、台湾国立政治大学で行われたアジア女性法学シンポジウム(報告者、10月)と韓国・東亜大学富民キャンパスで行われたアジア家族法三国会議に参加し(12月)、インタビューを通じて十分な意見交換を行うとともに人的ネットワークの形成にも努めた。また、日本国内で入手困難な文献資料についても、こうした出張の機会に収集することができた。 その他、関係学会への参加を通じて本研究に必要な情報交換も行った。特に比較法学会(6月)、ジェンダー法学会(12月)、名古屋大学開催の「アジアにおける同性婚に対する法的対応」シンポジウム(2016年3月)で収めた成果が、本研究にフィードバックされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要な領域横断的な文献資料は、関連データベース(外国含む)や外国現地において順調に収集することができた。そして、出張の機会を利用してそれぞれ現地に赴き研究者や実務家に直接会い、インタビューはもちろん、勧められた重要かつ貴重な文献などの収集も可能になった。そして、なによりもその得た成果を発表することができ、関連論文も公表することができた。今後の研究基盤をいっそう整えることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は研究全体の最終年度にあたることから、これまでの総括を行うことが最大の目的となる。そのため、各国の家族法とジェンダー問題に関わる調査結果と文献資料の整理は春学期のうちに済ませ、大学が夏季休暇の時期を利用し集中的に分析検討を行う。具体的には、これまでの研究調査から明らかになったことと今後の課題として残されたこととを明確に腑分けした上で、得られた成果を確認し、秋学期に入り次第、直ちに研究成果をとりまとめた論文作成を開始する。 ただ、この段階に至っても、諸事情によっては必ずしも予定通りに研究が進まない場合があり得る。だが、その際にも、得られた結果と資料を元に明らかになった事柄をまとめ、現時点における最先端の研究成果として、次年度の比較法学会での報告と『比較法研究』での公表を目指す。また、本研究成果は、その都度申請者が担当する北海道大学や非常勤先の授業を通じて学生に教授し、札幌市男女共同参画センターの行事等を通じて広く社会へと向けて発信する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額66,246円は、実際には平成27年度末に本研究課題実施のための研究活動に使用したものの、所属研究機関における財務上の処理が平成27年度中に完了しなかったため、名目上残高として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記で述べた通り、図書費としてすでに執行済みである。
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