2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 啓之 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 准教授 (60580397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 租税法 / 共同事業 / 形態 / 所得 / 課税 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、租税法の関連法領域における共同事業の形態のあり方について、従来の理解を確実なものとするため、行政法については、Klaus Vogelの著作を収集および分析し、私法については、主として、Flume, Knobbe-Keuk, SchoenおよびHuettemannというBonn学派の著作を収集および分析することに多くの時間を費やした。特に、Bonn学派の研究者は、租税法と私法のいずれの法領域についても、学界の最前線において、示唆に富む研究を重ねており、これは、代表者の研究課題に対して明晰な輪郭を与えた。 また、以上の過程において、租税法における外国の法形態の位置づけについて、判例評釈および比較法研究という形で、中間的な成果を公表した。これは、租税法を含む国内行政法の体系における国際私法の位置づけにかかわるものであり、問題の性質上、本格的な考察は断念したものの、問題の所在とドイツの実定法については、明晰な実像を描くことに努めた。さらに、所得課税の基本的な構造について、比較法研究から得られた視角を生かしながら、もっぱら日本の実定法を対象として、試論的な考察を展開した。これは、総合所得税と分類所得税の対置という古典的な財政学の図式に見出されるべきであった法的な問題の所在を、日本の実定法の再解釈を通じて明らかにすることを意図したものである。 平成27年度は、以上の準備作業を踏まえつつ、「共同事業の形態と所得課税」のあり方について、暫定的な研究成果を公表するため、少なくともその基礎作業を完了させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、租税法の関連法領域における共同事業の形態のあり方について、いくつかの前提的な理解を得ることができた上、その成果を年度内に公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の準備作業により、租税実体法においては、多様な法形態を通じて行われる多様な共同事業から生じた所得についてできる限り平等な取扱いが志向されるのに対し、私法秩序を基礎とする租税法関係においては、それぞれの法人格の差異を捨象することができない、という所得課税と法形式間の緊張関係が明確にされた。平成27年度は、まず、このような緊張関係を解消するための法理として形成されてきた、租税法における広義の不当利得の体系を解明する作業を行いたい。 また、同じく平成27年度は、ドイツでの在外研究のための準備期間としても位置づけている。そのための作業の一環として、授業期間外の期間を利用して、現地で事前調査を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究費については、48,836円の残額が生じた。これは、会計処理の都合上、購入した書籍の代金の支払いが次年度にずれ込んだためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度内に支払われなかった上記の購入費に、この分を充当して直ちに執行する。
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