2014 Fiscal Year Research-status Report
ブランダイス理論を基礎とした表現の自由の法理の再評価
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26780013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 昌彦 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90456096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表現の自由理論 / 憲法法理 / 内容規制・内容中立規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ブランダイス裁判官が記したテクストを再読することにより、表現の自由理論の再構築を目的とするものである。平成26年度においては、Whitney v. California判決、Vincent Blasi, The First Amendment and The Ideal of Civic Courage: The Brandeis Opinion in Whitney v. California, 29 WM & MARY L. REV. 653 (1988)などの諸文献の読解を基礎としつつ、Whitten, Criminal Syndicalism and the Law in California: 1919-1927TRANSACTIONS AM. PHIL. SOC., March 1969等を参照にしつつ、1920年代においてアメリカ各州で広がった革新主義的運動の抑圧を目的とした諸立法の経緯やその内容を追った。同研究における最終的な研究発表は今後随時おこなっていく予定であるが、これまでの成果を踏まえつつ、表現の自由研究として、同僚の前田健と共著で、木下昌彦・前田健「著作権法の憲法適合的解釈に向けて-ハイスコアガール事件が突き付ける課題とその克服」ジュリスト1478号46頁‐52頁を公表した。同論文は、表現の自由における基礎理論を踏まえたものであり、助成を受けた研究の中間的成果として位置づけることできる。また、上記、ジュリスト論文を巡っては、既に、大きな反響を呼んでおり、同論文の発表は、学会や社会、企業法務実務において一定の貢献を果たしたものと理解している。本研究課題に直接関連する具体的な論文の発表には至っていないが、ブランダイス研究は着実に進展しており、平成27年度中には、本件、助成を受けた研究の大枠を示すことになる成果を公表できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、研究目的を達成するため、①Whitney判決の歴史的背景、②ブランダイス意見に影響を与えた思想、③ホームズの思想の自由市場論やスキャンロンの自律理論との相違点を研究してきた。それぞれ関連文献の収集と読解は既に終えており、平成27年度はそれらをまとめ公表できる段階に至ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に進めたブランダイス意見に関する研究を継続する一方、ブランダイス意見に内在する原理を基礎に内容規制・内容中立規制の区別および明白かつ現在の危険の法理の再評価を進める。その際に、Stone, Content Regulation and the First amendment, 25 Wm. & Mary L. Rev. 189 (1983)など、アメリカにおける表現の自由の法理に関する基本文献の内容の読解、整理をおこなうと共に、我が国における内容規制・内容中立規制の代表的研究である市川正人『表現の自由の法理』(日本評論社,2003年)及び明白かつ現在に危険の法理の代表的研究である伊藤正己『言論・出版の自由』(岩波書店,1959年)に対し批判的検討を進める予定である。また、表現内容規制に対する我が国の重要判例である渋谷暴動事件(最判平成2年9月28日刑集44巻6号463頁)やチャタレー事件(最大判昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁)の論理に対しても批判的検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度中に海外において文献調査をおこなう予定であったが、海外での文献調査を効率的におこなう前に、日本で取得できる文献の読解を終えておく必要があるところ、計画された文献を全て読解することができなかった。そのため、海外での文献調査は、平成26年度中にはおこなわれず、そのため、次年度使用額が発生することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度中に、文献調査に必要なテクストの読解、分析は凡そ終了したので、平成26年度に計画していたアメリカ合衆国における文献調査を実施する予定であり、次年度使用額相当分は、アメリカ合衆国における文献調査において使用する予定である。
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