2016 Fiscal Year Research-status Report
ブランダイス理論を基礎とした表現の自由の法理の再評価
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26780013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 昌彦 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (90456096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 事前抑制の法理 / 情報摂取の自由 / 表現の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、本研究課題に関する文献の収集に努めるとともに、研究成果の発表文献である「自由と時間-Whitney v. Californiaから読み解くルイス・ブランダイスの共和国構想」の執筆に従事した。Whitney v. California事件のブランダイス裁判官の同意意見については、その起案文書がほぼ全文公開されているところ、平成28年度は、その内容と変遷の分析と整理に多くの時間を費やすことになった。また、Haig Bosmajian, "Anita Whiteny, Louis Brandeis, and the First Amendment' が、Whitney v. Californiaの文献研究としては重要な先行業績となるところ、当該研究の分析手法や論理構成の分析も同時に進めた。なお、本研究課題の目的達成のためには、表現の自由の基礎理論の解明も進める必要があるところ、平成28年度は、その成果として、いくつかの論文発表を実現することができた。まず、「著作者の権利と事前抑制の法理(補論)-著作権判例百選事件保全異議審決定を受けて」法律時報は、表現の自由の基礎法理である事前抑制の法理の理解について本研究課題の研究を通じて得られた知見をもとに公表されたものである。また、「博物館の管理と情報摂取の自由-太地町立くじらの博物館事件を素材として-」地方自治は、特に、情報摂取の自由の意義という表現の自由と密接に関連する問題を扱った成果であり、本研究課題の研究過程で得られた知見を基にして公表したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「自由と時間-Whitney v. Californiaから読み解くルイス・ブランダイスの共和国構想」の執筆」は、ホームズとブランダイスの表現の自由理論の比較部分の執筆やWhiteny事件の背景となった同時期の社会主義活動とその規制に対する研究が進むなど、計画通り進んでいるが、他方で、同研究から派生した表現の自由理論の研究あるいはアメリカ進歩主義の研究とその成果の発表にも、平成28年度は、多くの時間を割いたこともあり、予想以上に研究が進展しているわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究課題の総まとめの年に該当し、これまでの年度において収集した文献や資料をもう一度再整理し直したうえで、現在執筆途上である「自由と時間-Whitney v. Californiaから読み解くルイス・ブランダイスの共和国構想」の完成を実現しようと考えている。ただ、共和主義の思想的系譜の研究・整理が充分に進んでおらず、平成29年度は、欧州における共和主義思想の解明・分析と他の思想的系譜との対照分析に重点を置く予定である。その結果として、ブランダイスの思想的淵源と独自性を炙り出すことができるよう努めていく。また、引き続き、文献収集にも努めていく。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、研究計画通りの支出となったが、平成27年度の未使用額が多かったため、結果として、全体の未使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、引き続き、まだ十分に収集できていない文献の収集に努め、また、国内外の研究会に出席し、本研究課題にかかわる知見について、他の研究者から情報収集と意見交換をおこない、研究課題の公表の実現に向けて予算を使用する予定である。
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