2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Constitutional Analysis of Civil Remedies for Hate Speech
Project/Area Number |
26780015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
梶原 健佑 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40510227)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2016年度は、損害賠償と差止めの2つの救済方法に分けて次のように検討した。 (1)損害賠償 昨年度までの研究のまとめでもある論文「ヘイトスピーチに対する民事救済と憲法」(2016年5月公刊)を下敷きに、さらに検討を進めた。そこでの検討の論点は、特定の被害者の救済を志向した法制度である民事不法行為の枠内で、不特定型ヘイトスピーチに対してどこまでの救済が可能であるか、その道筋(不法行為類型)、憲法上保護される表現との切り分け・免責法理の彫琢の方向性、そして、特例的な訴権付与による打開策は適切か、であった。また、ヘイトスピーチ問題の派生的事象である所謂「在日認定」につき、不法行為として責任追及が可能であるか、日米のさまざまな関連判例を素材に分析・検討した。それら検討結果の一端は、九州公法判例研究会(2016年7月)と山口法学研究会(2017年2月)とで報告したが、年度内の論文公表には至らなかった。 (2)差止め 2016年にヘイトデモへの差止めを認める裁判所の決定が出されたことを契機に、ヘイトデモの差止めに対する憲法学的検討を進めた。我が国における類似の事案との比較、アメリカ法との対照等を手法として検討し、上記の九州公法判例研究会およびヘイトクライム研究会(2016年9月)とで報告を行った。しかし、こちらも年度内に活字化するには至らなかった。 以上のように、「ヘイトスピーチに対する民事救済」に関して幅広い論点につき必要な検討を行うことができたと考えている。いずれの研究も期間内に検討結果を公表するところまで漕ぎ着けられなかったことは、まことに忸怩たる思いであるが、近い時期に積み残しを片付けて公表することを目指し、作業を進めている。
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