2016 Fiscal Year Research-status Report
現代民主主義国家における一般国家理論:主権・代表・近代国家概念の変容と連続性
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26780016
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西貝 小名都 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (20580400)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国民主権 / 国家法人格 / 法体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
国家理論と民主主義理論に関する研究成果のうちの大きな一角をまとめた論考として,国家学会雑誌に「ナシオン主権論とプープル主権論(1~5・完)」を連載させていただいた.フランス公法学の学問用語であるナシオン主権論とプープル主権論は,1970年代以来,日本の公法学会でもよく知られた概念になった.しかし,日本の議論が依拠している1970年代のフランス公法学会における議論は,その後同国でより深いレベルの考察が多くなされるようになったことによって,ほとんどフランスでは通説としての地位を失っている.そこで,本論文では,フランスの現在の議論のレベルまで日本の議論をアップデートすると同時に,フランスでの現在の議論において未だ深い考察がなされていない部分に関して,最近の法哲学の研究成果を取り入れつつ,新たな考察を行なった. 法体系に関して,主権と並ぶ大きな問題である連邦制の問題は,地方自治と連邦制の境界線をどのように引くかという問題と不可分でもある.特に日本の団体自治論は,戦後,民主主義との対立構造を持つものとして提示されることもしばしばあり,主権と法体系の関係から見て,学説史的にも興味深い素材を提供している.そこで,日本法における団体自治論に関して,その歴史的形成過程と現在の法体系論の水準から見たその位置づけについて研究を行なった.その成果の一部は,各種研究会で口頭報告を行なった他,「団体自治について(一)」として法学会雑誌に掲載した.連載は何らかの形で続ける予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,順調に進展していると考えられる.当初の構想では,民主主義論ないし主権論と,法体系ないし国家理論との間の溝を埋めるという点に主眼があったところ,現在,法体系論における主権者論の位置づけを整理して,一つの体系をまとめることができたので,理論的な意味での当初の目標は達成しているといえる.これを「おおむね」としたのは,当初計画には日本の学説史として見る作業も含まれていたからである.日本の学説史という観点から考えると,歴史的,宗教学的な考察も必要になるところ,この作業は当初から続けており,今も継続中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はあと一年あるので,残りの一年は,これまでの研究成果を英語で発表することにも力を入れる.また,団体自治の問題については,連載を続け,法体系の問題についての残りの考察をまとめたい.また,日本の学説史の観点からは,前年の国体論争に関する研究に引き続き,残り一年は,地方自治に関する幕末からの議論状況についてさらに研究を進める.地方自治問題に関する理論的研究も,これとリンクさせつつ進める.
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Causes of Carryover |
書籍購入にあたり,購入する予定であった本が残額をわずかに上回ってしまったため,残額を購入に用いることができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて,書籍購入および旅費に充てさせていただきたい.
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Research Products
(7 results)