2014 Fiscal Year Research-status Report
EU情報通信法制の研究―独立行政機関の在り方を中心に―
Project/Area Number |
26780017
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
寺田 麻佑 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (00634049)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 行政組織 / 独立行政機関 / 情報通信法 / 放送法 / ネットワーク / EUテレコムポリシー / 情報通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
①EU情報通信法に関する様々な議論を整理した。特にEUの情報通信関連法制度の中でもEUテレコムポリシーに関する調整機関であるBERECに関する欧州委員会・欧州議会での議論や今後の方向性について動向を研究し、検討を行った。②EU 電気通信分野における独立行政機関に関する議論に関して、カッセル大学IT法研究センターのロスナーゲル教授を訪問し、意見交換を行うとともに、IT法センターの研究メンバーとも議論を行い、実際に欧州単一の電気通信規制庁を設置することには様々な問題点があることを確認した。さらに、次年度以降の研究協力体制についても確認した。③また、現在のBERECの代表者(スウェーデン電気通信規制庁長官)をストックホルムに訪問し、BERECの調整機関としての役割について確認するとともに、その独立性とEUテレコムポリシーへの影響力の大きさにつき、他のスウェーデン電気通信規制庁の行政官らとともに議論を行った(その成果は、既に「BERECとEU電気通信市場に対する法政策」として2015-EIP-67(1‐7)に公表されている)。④さらに、日本法への示唆を得るため、日本における情報通信分野の独立規制機関に関する議論を検討した。特に、個人情報保護法と特定個人情報保護委員会に関して研究を進め、板倉陽一郎弁護士と公開講演会・研究会を開催したほか、検討会等における最新の議論の推移並びに今後検討すべき問題点に関する示唆を得るため、宍戸常寿教授と2015年2月20日に研究会を行った。⑤様々な意見交換の結果、テレコム分野における規制標準化の問題はEUにおける最重要課題の一つであるため、テレコム規制庁といったEU全体を統括する独立した規制機関の可能性が考えられているが、今後も各国の規制機関の調整を行うBERECの大幅な変革は予定せず、各国規制機関は独自の規制を維持し、規制のハーモナイゼーションをBERECを中心に行うことが重要であると認識されていることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、EU情報通信法制に関する研究のなかでも、EUにおけるテレコム全体の法政策に関わる電気通信規制庁の設置の可能性とEUテレコムポリシーを現在の調整機関であるBERECの研究を中心に行い、その独立性などを様々な角度から検討した。その結果として、BERECに関して2件の招待講演を行ったほか、様々な調整の末、実際にBERECの代表者(スウェーデンの電気通信規制庁長官)をストックホルム、スウェーデンに訪問し、2014年12月16日にBERECという機関の独立性、その影響力などに関して個別のインタビューを行うとともに、長官を含めたスウェーデン電気通信規制庁においてBEREC業務を担当している行政官らと研究会を行うことができた。また、三年目に予定している日本における公開シンポジウム開催に向けて、ドイツ・カッセル大学のIT法研究センターを訪問し、アレクサンダー・ロスナーゲル教授から招聘に関する受諾をうけることができた。また、日本の情報通信行政(特に個人情報保護法分野)に関し、2015年1月22日に国際基督教大学において板倉陽一郎弁護士を招聘し、公開講演を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進については、平成26年度において検討したEUのBERECに関わる法政策策定手続の現状を踏まえ、日本における独立行政機関に関する議論の検討も含めて、比較法的に幅広い観点から考察を進めることを予定している。具体的には、国内外の学会における関連する議論に参加し、出来る限り報告も行うことを予定している。同時に、EUにおける情報通信法制とテレコムポリシーの中でも特にBERECに関する研究を独立規制機関を検討する観点からまとめ、論文の公刊を積極的に行う。また、情報通信分野におけるEUとEUを構成する各国の規制の在り方につき、カッセル大学IT法研究センターのロスナーゲル教授とも、引き続き意見交換を行う。加えて、ドイツ・ヘッセン州の放送法に関する法律アドヴァイザーであるアーデミール教授とも意見交換を行う。日本法に関しては、特に特定個人情報保護委員会が個人情報保護委員会へと改組されることを中心に、その他委員会等の在り方についても視野を広げつつ、引き続き独立行政機関の在り方について検討を進め、研究発表を行っていく。
|
Causes of Carryover |
初年度の後半に当初の予想以上にBERECの代表者(スウェーデン電気通信規制庁長官)を直接訪問することが可能な調整が整った結果、想定以上に外国旅費を使用することが予想されたために、助成金の初年度受け入れ分につき、計画的に一部の執行を留保したためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように想定以上の国際的な研究の進展があったために、次年度も学会等を含めてEU情報通信法制の現状につき、国内外で研究を進め、また、EUの執行機関にも訪問を予定している。次年度使用額分はすべて外国旅費に充当する予定である。
|