2016 Fiscal Year Research-status Report
国際人道法における国家責任制度の研究-国家責任条文と条約体制の相互関係-
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26780029
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
黒崎 将広 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 人文社会科学群, 准教授 (10545859)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際人道法 / 武力紛争法 / 国際刑事法 / 国家責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に日本国際法学会で行った国際人道法違反の責任問題の前提となる武力紛争の発生要件について引き続き研究を進め、その成果の一部を論文「国際的武力紛争の発生条件再考――戦闘員資格の機能――」として『国際法外交雑誌』第115巻第2号(2016年)で発表した。個人と国家の責任追及に際して裁判所が解釈する裁判規範としての国際人道法が実際の国家の行動の法的基準としてどこまで妥当しうるのかといった問題意識の下、行為規範としての国際人道法に焦点を当てたものである。
また、国家責任における行為帰属法理にも関係する国際人道法における交戦者資格の意味についても研究を進めた。国際人道法上、交戦者を代表して敵対行為に参加する者の地位は、「不法戦闘員(unlawful combatants)」ないし「非特権的交戦者(unprivileged belligerents)」の問題として今なお最も注目を集めている問題である。この問題に即して、戦闘員資格との関係に留意しつつ、交戦者資格の意味を扱う報告を研究会で行った。今後もさらに研究を進め、研究成果を発表していく予定である。
最後に、以上と並行して国際人道法の履行確保・遵守制度についても研究を進めた。この問題は、アカウンタビリティ(説明責任)との関係で今日喫緊のものと位置づけられており、新たなメカニズムの構築について赤十字国際委員会(ICRC: International Committee of Red Cross)とスイス政府の主催で公式会議が重ねられている。研究の際にはこの動向にとくに注目してきたが、来年度も引き続きこの作業を進めて研究成果に反映していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに本研究の一部について前年度に行った報告を今年度は論文の形に資、査読を経て権威ある学会誌を通じて発信することができた。さらに、本研究にかかる他の個別事例研究を引き続き進め、関係研究会報告も実施している。以上に鑑み、「おおむね順調に進展している」との判断を下した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き個別分野事例の特定とそのための資料収集を進め、研究報告と論文執筆に努めたい。とくに平成29年度では、国家責任における行為帰属の問題を意識しつつ、交戦者資格の意味について研究を行うと同時に、国際人道法の履行確保の観点からアカウンタビリティについても研究を進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、資料収集のための出張および招聘の機会を多くとることに備えて、今年度は使用を抑制した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の性格上、出張および招聘を通じた資料収集が中心となることから、引き続きこれを使用目的の中心に据えたい。
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Research Products
(2 results)