2014 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ労働協約法の変容を契機とした労働者代表制の研究
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26780030
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑村 裕美子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70376391)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 協約自治 / ドイツ労働法 / 労働組合 / 労働協約 / 労働者代表 / ドイツ産別組合 / 協約単一原則 / 企業別協約 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ドイツの労働協約制度の変容について、ドイツ学説、裁判例および立法の動向を確認した。ドイツでは、2010年に協約単一原則が廃止された後、労働組合の分裂が進んでおり、従来の巨大な産別組合を中心とする協約システムが揺らいでいる。そうした中、学説や裁判例では、労働組合が分散化した結果、頻発しているストライキへの対応が重要な政策課題となっているほか、労働組合による労働協約への実体的規制の要否が議論され、2014年には、労働協約であっても下回ることのできない最低限の賃金レベルを定める最低賃金法が成立している。 また最近では、労使関係の安定化のために協約単一原則を法律によって導入しようとする動きもあり、これが成立した場合に労働協約による労働条決定の余地が広がるのか狭まるのか、新たな動きを注視する必要があることが分かった。さらに、国際競争力の強化のため、産別協約よりも不利な労働条件を定める企業別協約が締結され、協約による拘束から免れようとする企業を阻止する動きもあるが、ドイツにおける企業別協約は企業外の労働組合(産別組合)が締結するもので、日本のように企業別組合が締結するものではないことが分かった。 これらの議論が意味するところや日本法への示唆についてはもう少し整理・分析が必要であるが、日本で広く知られてきた産別協約を中心とするドイツ法の構造が崩れてきた背景やその過程を明らかにすることは、日本の労働組合と従業員代表の権限関係を考察するうえで重要な基礎的作業に位置付けられ、初年度に議論の現況を一定程度把握できたことは有益であった。2年目には、労働協約システムの変容の全体像を踏まえてドイツ法の示唆を分析したいと考えている。ドイツの労働協約制度の変容が分かれば、企業別組合を主流としてきた日本において、企業レベルの労働者代表のあり方を思考する契機となるので、大変有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は「変容」についてドイツで現在生じている議論を把握することを目的とし、文献調査に重点を置くことを予定していた。その結果、予想以上に複雑な議論が展開されていることが分かり、基礎作業により多くの時間を費やす必要が生じ、現地調査よりも文献購入のために多くの費用を要した。しかし、いずれにせよ1年目には基礎作業を行う予定であったので、その目的からはそれておらず、基礎作業はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、ドイツの協約制度の変容が意味するところについて、ドイツ人との意見交換をより積極的に行いたいと考えている。文献調査は2年目も必要であるが、専門家との意見交換の機会を1年目よりも多く作りたいと考えている。そのうえで、日本法への具体的示唆を得られるように、これまでに蓄積されつつある議論を整理・分析したいと考えている。
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Causes of Carryover |
プリンター用紙など消耗品が予定より少量で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の残額については、成果物の取りまとめ等のため、翌年の支出分と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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[Book] The Right to Strike: Japan, The Right to Strike - a Comparative View-2014
Author(s)
Bernd Waas (ed.), Effrosyni Bakirtzim Hadara Bar-Mor, Florian Burger, Tankut Centel, Charles Chapman Lopez, Charles B. Craver, Darcy du Toit, Flor Espinoza Huacon, Hugo Fernandez Brignoni, Piotr Grzebyk, Michal Horovitz, Mijke Houwerzijl, Petr Hurka, Caroline Johansson, Edit Kajtar, Anthony Kerr, Yumiko Kuwamura etc.
Total Pages
621(351-368)
Publisher
Kluwer Law International
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[Book] Aktuelle arbeitsrechtliche Herausforderungen in Japan und Deutschland.2014
Author(s)
Martin Henssler und Kazuaki Tezuka (Hrs.), Takashi Araki, Rolf Wank, Jan Schell, Yumiko Kuwamura, Martin Henssler, Yoko Hashimoto, Peter Hanau, Ulrich Becker, Kazuaki Tezuka, Kazuo Sugeno and Ulrich Preis.
Total Pages
179(55-74)
Publisher
Heymanns Verlag Gmbh
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