2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780031
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石崎 由希子 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (50547817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 病気休職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に行った日本法の分析・検討や問題状況の把握、分析軸の設定を踏まえて、フランス法及びドイツ法の検討を行った。その結果、健康状態を理由とする解雇を原則禁止とするか(フランス)、疾病を解雇の合理的理由ととらえるか(ドイツ)という議論の出発点に違いがみられるものの、いずれの国においても、疾病を理由とする雇用終了に対しては厳格な法規制が課せられていることが確認された。他方で、疾病は労働者の帰責事由に基づくものではなく、疾病による一時的な労務提供不能期間について雇用関係は存続するという規範については、こうした規制が整備される前から存在していたことが認められた。この点に関しては、当事者の意思によって排除可能とされる任意規範の役割や機能が注目されるところであり、民法学説における任意規範の捉え方などにも留意しつつ、更なる検討が予定されるところである。さらに、フランス・ドイツのいずれにおいても、復職過程について法規制を置いていることが確認された。特に、フランスでは復職可能性判断について専門家としての産業医が決定的な役割を担っているのに対し、ドイツでは従業員代表が関与すること、労働者を含む関係当事者の合意形成が重視されている点が違いとして注目されるところである。 なお、日本法においては、障害者雇用促進法が施行されるに伴い、障害を有する労働者に対する合理的配慮義務をめぐる議論の進展や新たな判例の展開が注目されるところである。こうした点をフォローしつつ、次年度以降の検討に役立てていきたい。 上記成果の一部については、法学協会雑誌への連載や学会誌への掲載あるいは学会報告の形で公表することができた。また、法学協会雑誌に連載した論文については、財団法人労働問題リサーチセンターから沖永賞を授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日程の調整がつかず、本年度予定していた海外調査を行うことができなかったが、本年度は前年度及び今年度からまとめていたフランス法・ドイツ法及び日本法との比較法的検討の成果の一部を学術論文及び学会報告の形で公表することができた。また、次年度予定していた総合的検討についても一定の範囲で進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査を実施するとともに、そのとりまとめを進めていきたい。 また、近年、海外データベースのコンテンツの充実化もみられるため、紙媒体を購入する際のコストと比較しつつ、更なるデータベースの導入も検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた海外調査を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査を実施するほか、海外データベース等を活用する。
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