2017 Fiscal Year Research-status Report
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26780031
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石崎 由希子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50547817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 病気休職 / 障害者雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に引き続き、改正障害者雇用促進法及び同法を具体化した合理的配慮指針の意義と課題について検討を行い、特に、処遇低下を伴う配置転換など、合理的配慮が不利益を伴う場合には、差別的取扱いに該当するおそれがあること、そのため、復職過程にある労働者との関係で、使用者がこうした不利益を伴う配慮の検討をすべきであるとの裁判規範を認めることは困難であるとの一応の結論を得た。この検討結果については、論文の形で公表している。また、同様の問題意識から、使用者の配慮により軽易な業務に従事していた障害者を昇格させないことが差別に当たらないかが争われ、これが否定されたS社(障害者)事件・名古屋高判平成27・2・27労経速2253号10頁について、研究会での報告を行った。復職過程における使用者の配慮という点からは、リハビリ勤務を経た場合でも、「相当期間内の回復」が見込まれれば、休職事由が消滅したと判断すべきとの一般論を示した綜企画設計事件・東京地判平成28年9月28日労経速2304号3頁が注目されるが、同事件については研究会で報告の上、判例解説を公表している。 また、働き方改革実現会議の中では、重要な政策課題の1つとして「病気の治療と仕事の両立」が取り上げられ、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)では、今後の対応として、①会社の意識改革と受入体制の整備、②トライアル型支援などの推進、③労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化をすべきことなどが示されていたところであるが、その意義と課題について若干の考察を行い、その成果を公表できた。 さらに、傷病労働者の就労継続という点からは、テレワーク等をはじめとする柔軟な働き方に関する法規制の在り方も重要となるが、この点に関する検討を行う機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育児や自身の健康上の理由から研究時間が制約されたが、一定の研究成果について公表することができた。また、同様の理由から、平成29年度に海外調査を実施することはかなわなかったが、平成30年度の実施を計画しているほか、この間に、障害者法についての検討を深めることができた他、ドイツ法の状況については、文献調査により一定の情報を得るに至っている。なお、柔軟な働き方に関する法規制は、平成29年度に入ってから新たに検討の対象に加えたものであることから、どこまで検討を深められるかは今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
「働き方改革実行計画」において重要な政策課題として位置付けられている「病気の治療と仕事の両立」については、上述のとおり、平成29年度に既に検討を行ったところであるが、紙幅や能力の関係などから、十分に論じ切らなかった点も多々あることなどから、今年度においても引き続き検討を予定する。また、このこととの関係では「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」がソフトローとしてどのように機能しうるかについては、更に検討を行いたい。 また、ドイツにおいては、2016年12月の連邦社会参加法により、障害者法である社会法典第9編も大幅に改正されている。改正法施行後の実態を把握するためにも、今年度の冬頃にドイツでの海外調査を予定したいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年度に予定していた海外調査を実施できなかった。海外調査に代えて、データベースに利用することも検討したが、平成30年度に海外調査実施の見込みができたため、使用額を残すこととした。
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