2014 Fiscal Year Research-status Report
独占禁止法上の「効率性の抗弁」の根拠及び判断基準をめぐる比較法学と経済学の協働
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26780032
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
柳 武史 立正大学, 法学部, 講師 (40724000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 効率性 / 抗弁 / 総余剰 / 消費者余剰 / 競争促進的効果 / 正当化事由 / 適用除外 / 違法性阻却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合を総合的に検討することを目的としている。 効率性の抗弁については、英語の研究論文であるTakeshi Yanagi, Efficiency Defense in Antitrust Law, Harvard University USJP Occasional Paper 14-16, pp.1-40 (2014)をハーバード大学に提出した。カナダ競争法96条は効率性の抗弁を明示に認める法制を採用しており、ケースとしてSuperior Propane事件がある。効率性の内容として総余剰基準を考える見解も有力であったが、この事件ではBalancing Weights基準と呼ばれる総余剰基準と消費者余剰基準の折衷的見解を採用することで決着をみた。立法趣旨からすれば総余剰基準という帰結が素直であるにも関わらず、折衷的見解を採用せざるを得なかったことは、消費者の利益の保護が競争法の重要な目的であることを示唆している。 そして、効率性の抗弁に関連する問題として、反競争的行為の存在を前提として競争促進的効果があることから正当化が認められた場合についても研究を進めている。具体的には、米国反トラスト法におけるSonora Community Hospital事件の検討を通して、正当化事由の立証構造を明らかにする論稿を立正法学論集49巻1号(2015年)に公表する。そこでは事実上の重なりという視点が重要であるようにも思われるが、正当化事由という局面ではないものの、私的独占の排除行為に関してこれを検討したJASRAC事件の判例評釈を、柳武史「私的独占の『排除』の解釈における排除効果の位置付け」法学セミナー増刊・速報判例解説vol.15『新・判例解説Watch』259-262頁(2014年)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の概要」に記載した通り、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合について分析を進め、順調に研究成果を公表できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度の研究の蓄積をいかして、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合について幅広く検討を行う年度としたい。従来通り、文献を丹念に読み込んでいくほか、研究会における報告・討議をしたり、文献調査等のための出張をしたりすることを想定している。
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