2016 Fiscal Year Research-status Report
独占禁止法上の「効率性の抗弁」の根拠及び判断基準をめぐる比較法学と経済学の協働
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26780032
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
柳 武史 立正大学, 法学部, 専任講師 (40724000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 効率性 / 抗弁 / 総余剰 / 消費者余剰 / 競争促進的効果 / 正当化事由 / 適用除外 / 違法性阻却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合を総合的に検討することを目的としている。 第一に、効率性の抗弁に関する成果として、柳武史「カナダ競争局の2011年企業結合ガイドラインにおける効率性の考慮」立正法学論集51巻1号(2017年)を公表する(掲載確定)。これは、カナダ競争法96条1項が規定する効率性の抗弁をめぐるガイドラインの記述を全訳するとともに、若干の検討を加えたものである。そこでは、企業結合当事者の証明責任が強調されるに至った等のアップデートがなされた意義があるが、効率性の抗弁の解釈全般について示唆に富んだ判示をしたTervita事件連邦最高裁判所判決以降の展開も重要となろう。 第二に、我が国独占禁止法における正当化事由に関する成果として、柳武史「価格カルテルと行政指導:東京高裁平成28年9月2日判決」『平成28年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊)』264-265頁(2017年)を公表して、①行政指導による強制といえるか、及び②行政指導に従ったといえるかという論点を取り扱った裁判例について、正当化事由との関わりも踏まえて分析を行った。 第三に、経済法と密接に関係する国際経済法に関する成果として、英語の研究論文であるTakeshi Yanagi, Justification under International Economic Law: from the perspective of the SPS agreement, Rissho Law Review, Vol.50, No.2, PP.1-46 (2016)を公表して、福島第一原子力発電所事故によって米国が福島県産牛乳を輸入停止した例を取り上げ、SPS協定と関連した過去の紛争事例も踏まえて、衛生植物検疫措置が正当化される場合を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合について総合的に分析を進めており、順調に研究成果を公表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、これまでの研究の蓄積をいかして、効率性の抗弁を中心として反競争的行為が正当化される場合について最終的な結論も示唆することができる形で研究成果を公表することを目指していきたい。文献や資料等を丹念に読み込んでいくほか、研究会等において報告・討議をしたり、文献調査等のための出張をしたりすることを想定している。
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Research Products
(3 results)