2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780038
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小島 陽介 金沢大学, 法学系, 准教授 (40551487)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心理的因果性 / 客観的帰属論 / 心理的幇助 / 間接正犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では,まず日本刑法学会大会にて開催されたワークショップ「客観的帰属論と共犯論の諸問題」において,パネリストとして「心理的因果性について」と題する報告を行った。これは,本研究課題のテーマである「共犯者間の心理的やり取り」の内実について,特に飲酒運転での同乗者の処罰の要否に関する事例群に焦点を当てつつ,近時学界にてますます有力化しつつある客観的帰属論との関係を論じたものであり,中間的なものとはいえ本研究課題の一定の成果であるといえる。この報告は好評で,ワークショップにおけるフロアからの質問の多くも私の報告に対するものであり,私自身も大きな勉強になったと同時に,学界における議論の進展に一定の寄与をしたものと考えている。これについては,今年度中に何らかの形で成果として公表できるよう準備中である。 さらに,7月には「未承認医薬品の効能等を標榜する書籍の陳列・販売が,書店の店員らを道具とした間接正犯(薬事法の広告禁止違反)とは認められなかった事例(横浜地判平成25年5月10日判タ1402号377頁)」(商学討究66巻1号)を公刊した。こちらは,「情を知らさずに行動させる」という意味で共犯者間のコミュニケーションが「希薄」とも思われる間接正犯の事例において,かつ当初のやり取りから数年後になって行為が行われた場合というやや特殊な事例に関する評釈論文ながら,「コミュニケーションの現実化」が刑法上の意味を持ちうる限界を検討する資料になる事例として,同分野における学界内の議論の深化に一定の寄与をしたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は所属機関が変わるなど,自らの研究環境に大きな変化が生じた。かつ新年度間際にそれが確定したため,講義の準備等々で本課題に係る研究に十分な時間を割くことができなかった憾みがあることは残念ながら否定し難い。ワークショップでの報告や論文の公刊はしたものの,さらに中心的な点に対する討究がもう少しできたのではないかとも思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度が最終年度となるため,ますますスピード感をもって研究を進める。現在のところ,上記の通り学会報告にまつわる論文の公刊を構想中のほか,判例評釈ながら教唆犯(これも共犯者間のやり取りの可罰性の限界を問うものである)の公刊を今年度前半に予定している(エントリー済みで現在執筆の最終段階である)。問題点の整理はできているので,後は構想を成果としてまとめるよう精励する所存である。
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Causes of Carryover |
2014年度は使用に関する勝手がわからず旅費としての支出をほとんどしなかったため,2014年度の残額が2015年度に繰り越される形になった。2015年度は旅費としての使用がやや多くなった(それでも当初申請額をオーバーしては利用していない)ものの,研究環境の変化等もありやや使用頻度が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の公刊などで費用が掛かると見込まれるほか,完成に向けてさらに参考文献を購入する必要が見込まれる(2015年度はその分でやや抑えめだったようにも思われる)し,研究成果の報告のための旅費も必要となると見込まれる。このようにして適切に使用していく所存である。
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