2016 Fiscal Year Annual Research Report
A comprehensive study on "psychological interaction" in complicity
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26780038
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小島 陽介 金沢大学, 法学系, 准教授 (40551487)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刑法 / 共犯論 / 心理的因果性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,犯罪に関する「働き掛け」が共犯者相互間の心理にどのような影響を与えるかに関する法則性の解明を目指し開始された。3年間の研究の間,刑法学および心理学の多数の文献を参照し,成果を論稿および口頭報告として発表した。とりわけ,2015年5月に開催された日本刑法学会ではワークショップ「客観的帰属論と共犯論の諸問題」のパネリストを務め「心理的因果性について」と題する報告を行った。そこでは,近時ますます有力化しつつある客観的帰属論が人間心理における因果性判断においてどのように応用可能であり,あるいは変容を迫られるのかという問題意識から,近時の飲酒運転の同乗に関する事例を足掛かりに,心理的影響を及ぼす行為一般について,幇助者が出すコミュニケーションの内容を正犯者が正しく受容していること,さらにそのコミュニケーションが意味あるものと言えるためには,当事者間における「事前のシステム構築」が必要であり,それは事実関係をつぶさに把握して厳密な認定が必要であることを主張した。その報告をさらに発展させた「共犯者間における心理的因果性の判断に関する序論的考察」(仮題)を金沢法学誌上に連載予定であり,1回目の掲載がすでに決定している(60巻1号)。 また,共犯の各関与類型に関し裁判例をベースにした論稿も発表している。間接正犯に関しては,当初の行為から数年後に誘致された正犯行為については,背後者による「働き掛け」にはすでに正犯行為誘致の危険性が当罰的な量として存在しないことが,インサイダー取引事例にまつわる必要的共犯に関しては,法改正の趣旨を踏まえつつ,教唆という働き掛けの成立範囲を当事者の目的を踏まえて限定すべきことが示された。 このように,本研究におり,共犯者間の働き掛けが刑法上どのような形で処罰の可否に結び付けられるべきかが様々な領域において(少なくともその一端が)示されたと言える。
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