2016 Fiscal Year Research-status Report
「均衡の取れた修復的正義モデル」に基づく少年刑事司法のあり方に関する研究
Project/Area Number |
26780039
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
津田 雅也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80633643)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 少年法 / 少年の刑事事件 / 刑事処分選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、わが国における少年の刑事処分選択基準についての裁判例の分析を中心に研究を行い、文献調査、成果発表について、下記の実績を挙げることができた。 1.文献調査 わが国の少年事件の位置づけについて前年度の補完的な調査を行ったほか、少年事件の刑事処分選択について、少年法20条に関する裁判例の分析・検討を行った。裁判例は、いわゆる保護不適説の立場から、処分選択に際しては、罪質・情状という犯罪の性質のほか、少年の性格・非行歴・年齢等を踏まえて、刑事処分と保護処分のいずれが少年にとって有効な処遇かという観点から判断を行っていることが明らかになった。アメリカのケースブック・教科書の文献を用いて、アメリカにおける少年裁判所の管轄権放棄制度について調査した。裁判官裁量による管轄権放棄制度においては、日本と同様に多様な要素が考慮されているほか、その後の手続・処分(特に死刑・無期刑等の重い刑罰)も処分選択過程に影響を与えうることが明らかになった。また、制定法による自動的放棄制度においては、裁量の余地はないものの、その後の手続において少年裁判所にふたたび管轄権を戻す制度があり、わが国の20条2項および55条の解釈に参考になりうることが判明した。 2.成果発表 上記の文献調査を踏まえて、「わが国における少年の刑事処分の位置付けに関する議論」罪と罰54巻1号(2016年12月)87-99頁を公刊した。また、裁判例の分析については、平成29年2月4日(土)に、現行刑事法研究会(第16回)において「少年事件における逆送決定基準」と題した研究報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
講義負担の増加により、本研究の中核部分である「均衡の取れた修復的正義モデル」を用いてわが国における少年司法制度を分析することが十分にできなかった。このため、少年の刑事処分選択基準に関するわが国の判例分析という各論的な研究を行うに留まった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、最終年度であるので、「均衡の取れた修復的正義モデル」に関する検討・まとめの作業の速度を上げ、研究全体を体系化して成果を公刊したい。
|
Causes of Carryover |
「現在までの達成度」に記載したとおり、平成28年度は「均衡の取れた修復的正義モデル」についての分析・まとめを十分に進めることができなかった。したがって、その調査に必要な文献購入に充てるための費用を使用できず、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、平成29年度は、補充調査として文献購入を中心として費用を用いる予定である。また、研究の進捗が順調で、研究のまとめに必要があると判明したときは、海外出張を行い、均衡の取れた修復的正義モデルについてアメリカにおいて文献調査・実地調査を行う。
|
Research Products
(2 results)