2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Research on Bad Character and Similar Fact Evidence
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26780040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成瀬 剛 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (90466730)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 悪性格立証 / 類似事実による立証 / 刑事証拠法 / 裁判員制度 / 余罪と量刑 / 被害者の性的経歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の前半は,前2年間の比較法研究によって獲得した議論枠組を前提とした上で,日本の最高裁判例・下級審裁判例・主要な学説をその議論枠組の中に位置付けて,さらに検討を深めた。また,諸外国の議論と比較した際に,日本では十分に議論がなされていない論点(具体的には,性犯罪者被害者の性的経歴を実質証拠・補助証拠として用いることの可否や,被告人の悪性格・類似事実に関する証拠を量刑資料として用いることの証拠法的限界)についても考察した。 最終年度の後半は,これまでの全ての考察を踏まえて,本研究の検討課題に対する結論をまとめた。その内容は研究期間全体を通じて実施した研究の成果でもあるので,以下,詳述する。 悪性格・類似事実を実質証拠として用いる場合の許容性判断基準は,当該事実が要証事実を推認させる力(推認力)と事実認定者に与える弊害(偏見や誤導)との比較衡量によって決まる。この比較衡量は,当事者の主張する悪性格・類似事実の存在を仮定した上で,当該事実の有する推認力及び弊害を問題とするものであるから,悪性格・類似事実を立証するための証拠(人証や書証)自体の信用性を検討する必要はない。それゆえ,公判段階ではなく,公判前整理手続において,法曹三者が当該事実の推認力と弊害の程度を議論し,悪性格・類似事実に関する証拠の採否を決することができる。さらに,悪性格・類似事実を量刑資料として用いる場合も,量刑理論に基づいて適切な要証事実を同定すれば,基本的に同様の判断枠組・手続で証拠採否を判断できる。 本研究の意義は,①理論に裏打ちされた許容性判断基準に基づいて悪性格・類似事実による立証の可否を審査することにより,裁判員制度の下で安定した証拠採否判断がなされるようにしたこと,②証拠法の手続法的側面を理論的に基礎づけることにより,公判前整理手続における他の証拠群の許容性審理にも指針を提供したことである。
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Research Products
(7 results)