2017 Fiscal Year Annual Research Report
The analysis of the responsibility for juvenile delinquant and the measures to jujuvenile delinquency in Japan
Project/Area Number |
26780041
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大貝 葵 金沢大学, 法学系, 准教授 (90707978)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 弁識能力 / 個別的調査 / 教育的措置 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本においては、成人の刑罰が責任に応じてその量が定まるのに対し、少年の保護処分は、この要保護性に基づき決定される。従来の少年司法実務は、成人において求められる非難の根拠としての責任は、少年法においては、要保護性に解消されてきたと説明してきた。学説においても、少年の責任を成人の責任とは異なり、将来に向けた応答可能性であると説明するものや、少年の責任とは、少年が保護処分を受ける地位にあるということととであるとの説明がなされ、少年の責任は、非難の根拠とはなりえないことが通説的見解となっている。この意味において、近年の立法が、少年の責任を求め、厳罰化傾向にあることは、これまでの通説からは説明しがたいものである。 フランスにおいては、1810年のナポレオン刑法典や、最初の少年法である1912年少年法では、少年に刑罰を回避し教育的措置を適用するその根拠を、弁識能力が無いことに求めていた。この当時のフランス犯罪論体系として、弁識能力は、善悪の区別や正義不正義の観念という言葉で説明されている。パリ大学法学部教授であったOrtollanの説明によれば、弁識能力が欠ける場合には、有責性(cupabilite)が欠け、有責性と意思自由が欠ける場合には、帰責性(imputabilite)が欠けるとされる。帰責性がない場合には犯罪の責任が問えないと説明されている。 他方で、リヨン大学法学部教授のGarroudは、少年に対する教育的措置は、少年の個別的状況に即し、決定されてきたという実務運用を紹介している。すなわち、少年の教育的措置の必要性から、弁識能力の有無の判断が決定されるという逆転現象が生じていたことが明らかとなった。さらに、このような運用は、フランスの実務においては、肯定的に受け止められてきており、その後の立法に大きく影響を与えたことが明らかとなった。
|