2015 Fiscal Year Research-status Report
条件付親告罪制度からみた刑事訴追に対する公益と犯罪被害者の権利の限界
| Project/Area Number |
26780043
|
|---|
| Research Institution | Meiji University |
|---|
Principal Investigator |
黒澤 睦 明治大学, 法学部, 准教授 (40377239)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 親告罪 / 告訴 / 刑事訴追 / 公益 / 被害者 / 国際研究者交流 / ドイツ / 刑事訴訟法 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ刑法典等に規定されている条件付親告罪制度は，原則は被害者等の告訴がなければ刑事訴追できないが，例外として検察庁が「刑事訴追に対する特別な公益（das besondere oeffentliche Interesse an der Strafverfolgung）」があると認めると告訴がなくても刑事訴追できる制度である。本研究では，この「刑事訴追に対する特別な公益」概念を素材に，刑事司法において「公益」概念の果たす役割および犯罪被害者の権利の本質と限界を探ることを目的としている。
平成２７年度は，明治大学長期在外研究員としてドイツに滞在していることを活用して，全般的な資料収集・分析および理論・実務の実態調査のほかに，主として下記のような研究活動に力点を置いた。
１ わが国で性犯罪の非親告罪化の議論が進行しているため，ドイツの性犯罪における条件付親告罪について，その立法理由・学説・判例の整理・分析を行い，法律論叢８８巻６号（平成２８年３月）で，論説として，拙稿「ドイツの性犯罪における条件付親告罪規定――わが国の性犯罪は非親告罪化するしか道はないのか――」を公表した。
２ 条件付親告罪の理論的基礎および運用実態について，実務家・研究者等に対して予備的聞取調査・意見交換を行った。また，検察官による「刑事訴追に対する特別な公益」の認定について，ドイツ各地の裁判所において条件付親告罪の裁判傍聴等を行い，その実態の比較調査・検討を行った。
３ ＴＰＰとの関連で非親告罪化が議論されているわが国の著作権法における著作権侵害罪について，条件付親告罪が規定されているドイツの著作権法に検討対象を拡げ，論文執筆に着手した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
明治大学長期在外研究員として滞在しているドイツにおいて実務家・研究者等に対して詳細なインタビュー調査を実施する予定であったが，やむを得ない事情により研究協力者（予定者）の協力を得ることができなかったため，調査を実施することができなかった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況がやや遅れていることを考慮して，今後の研究は，当初の研究実施計画を若干変更し，以下のように進める予定である。
平成２８年度は，条件付親告罪について，立法理由・学説・判例の整理・分析を継続する。ドイツでの長期在外研究の１年間の延長が認められたため，それを活用して，詳細な実態調査を実施する。調査対象は，大学教員のみではなく，実務家も含むものとする。そして，平成２８年度中に，少なくとも，「ドイツの著作権法における条件付親告罪」および「ドイツの傷害罪における条件付親告罪」に関する論文を公表する。
平成２９年度（最終年度）は，それまでの検討・調査をもとに，必要であればドイツにおいて補充的な実態調査を実施した上で，学理・実務・実態に即した判例の詳細な分析等を行うとともに，本研究の研究成果をまとめる。
|
| Causes of Carryover |
明治大学長期在外研究員として滞在しているドイツにおいて実務家・研究者等に対して詳細なインタビュー調査を実施する予定であったが，やむを得ない事情により研究協力者（予定者）の協力を得ることができなかったため，調査を実施することができなかった。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成２８年度末までドイツでの長期在外研究の延長が認められたため，平成２７年度に予定していたドイツでの詳細なインタビュー調査を，平成２８年度中に実施する。また，必要であれば，平成２９年度にも補充的なインタビュー調査を実施する。
|
