2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780046
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山木戸 勇一郎 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20623052)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 取立委任 / 取立授権 / 訴訟追行権限 / 当事者適格 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
委託に基づいて債権の取立権を付与する「取立委任」は、対象債権について受託者が自己に対する給付を求めることができる実体的地位を付与するものであり、このような法事象の存在自体は比較的古くから認識されていたところである。もっとも、わが国の法体系の中においてその位置付けが明確に行われてきているわけではなく、ある特定の場面において非債権者が債務者に対して自らに給付をすることを請求することを実体法的に正当化するツールになっているにすぎない状況にあるため、手続法上の取扱いについても必ずしも明確ではない現状があるように思われる。このような状況の中で、取立権留保型の債権譲渡担保などで取立委任という法律構成が用いられているように、近年の金融システムにおいて取立委任の存在感が次第に増してきていることから、本研究は、取立委任をすることが手続法上いかなる意義と機能を有するかについて、ドイツ法との比較考察によって明らかにしようとするものである。 初年度であった昨年度は、当初の研究計画において設定した課題に従って、ドイツにおける取立授権の概念形成史を遡って検討し、取立授権が定着した現在に至る過程において、これらの点を克服するためにいかなる試みがなされてきたかを把握することに注力してきたところである。これに引き続いて、2年目である今年度は、取立授権が問題となった事例に関する近時の論考や裁判例に関する文献を調査するとともに、ドイツにおける取立授権がおおむね債権譲渡担保の場面が念頭に置かれていることから、債権譲渡論に関する文献を調査することによって、債権譲渡論の現状と取立授権の関係についても調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の調査・研究を進めていく段階において、予想以上に資料の量が存在したことから、その分析を進めるのに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる来年度は、今年度に引き続いてドイツ法の資料の解析を進めたうえで、ドイツにおける取立授権の現代的状況を調査するとともに、これを基にして、日本法における取立委任に関する議論の歴史や現状の到達点を踏まえたうえで、取立委任の手続法的な機能を明らかにする作業を行う。
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Causes of Carryover |
今年度の調査・研究を進めていく段階において、予想以上に資料の量が存在したことから、その解析を進めるのに時間を要することとなった。そして、当初今年度に予定していたドイツでの現地調査を充実させるためには、その資料の解析を終了させることによって、調査内容の精緻化を図る必要があると考えられたことから、前記現地調査を次年度に延期した。そのため、そのための旅費等に使用する予定であった部分の予算(428,614円)が未使用の結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この残額は平成28年度において、今年度に引き続いて資料の分析・検討をさらに進めたうえで、前記現地調査の内容の精緻化を図った上で、前記現地調査の旅費や文献の複写費等として使用する。
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