2015 Fiscal Year Research-status Report
取締役の労働者に対する責任論―会社の労働法令遵守への規律付け
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26780050
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
南 健悟 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70556844)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 取締役の賃金責任 / 株主の賃金責任 / 株主有限責任の原則 / 使用者概念 / 労働債権の保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、アメリカ及びカナダにおける株主及び取締役の労働者の賃金債権に対する責任について研究を進めた。 まず、アメリカにおいては、ニューヨーク州会社法630条に基づき、会社の賃金債務につき、閉鎖会社の株主のうち、持株数上位10名が、その責任を直接負わなければならないとする。この株主の賃金責任については、もともと多くの州会社法において認められていたものであったが、今やニューヨーク州を除き、削除されている。そこで、本年度の研究においては、株主の賃金責任が各州から削除されていった経緯を確認することで、その責任の正当性や合理性について検討を行った。しかし一方で、近時、一部ではあるが、会社役員の賃金責任を連邦及び各州労働法において認めるような裁判例も散見されていることから、株主ではなく会社役員に対して賃金責任を負わせることの可能性について考察を行った。 次に、カナダにおいては、多くの州及び連邦会社法において、取締役の賃金責任規定が存在する。そこで、本年度においては、まず、立法に係る歴史的経緯を確認し、カナダにおいて、なぜこのような規定が作られるようになったのか、という点を検討した。加えて、2000年代初頭には、カナダの会社法改正機運の高まりを受け、取締役の賃金責任規定の合理性について、かなり疑問が呈されてきたこともわかった。しかしながら、会社法改正においては、結局、当該規定は維持され、合理性に疑問を呈されながらも、残存したことの意味について考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ法及びカナダ法双方における取締役及び株主の賃金責任について、順調に調査を行うことができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今まで調査を行ったアメリカ及びカナダにおける賃金債権保護法制の現状を踏まえて、その合理性の根拠について明らかにしていくことが今後の研究となる。単に、現状把握に止まらず、その根拠を明確にすることで、日本法への示唆を得ることが重要となる。日本法においては、ニューヨーク州会社法やカナダの連邦会社法・各州会社法と類似の規定は存在しないことから、アメリカ及びカナダにおける現状とその合理性の根拠を明らかにすることで、日本法における解釈論や立法論にどのように示唆を与えるかが課題となる。
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Research Products
(5 results)