2015 Fiscal Year Research-status Report
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26780054
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 茨城大学, 人文学部, 准教授 (90634080)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民事法学 / 親権 / 親権停止 / 児童虐待 / 親子 / ドイツ / 配慮権 / 親の配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成23年の民法改正によって導入された親権停止制度に関して、親権停止後の公的検査について、ドイツ法との比較法的考察という観点から検討するものであり、その上で今後の親権停止制度の改正の方向性を示すことを目的としている。このような目的意識に基づき、平成27年度においては、研究実施計画に従い以下の研究を行い、昨年度までに行った研究を発展させた。 ①日本における文献調査、具体的には科研費を利用して必要な資料を購入するとともに、所属する茨城大学の図書館などの利用を通して、日本における親権停止制度およびそれに関わる判例や論文を収集し、研究を行った。 ②日本およびドイツにおける文献調査により、日本の親権に相当する、ドイツ法の「親の配慮」の制限について研究した。特に、日本の児童相談所に当たる青少年局の活動を規律する社会保障法典第8編についても調査範囲を広げ検討を行った。 ③ドイツにおいて、ボンにあるボン大学図書館、同大学家族法研究所、ミュンヘンにあるマックスプランク研究所、ドイツ青少年研究所、ハイデルベルクにあるドイツ青少年援助及び家族法研究所にて、これらの研究機関に所属する研究者より本研究について助言を得た。これにより、ドイツにおける最新の議論状況を把握することができたとともに、ドイツ法に対する理解を深めることができた。 ④ドイツのミュンヘンにおいて、同市の青少年局の担当者にインタビュー調査を行った。これにより、文献調査のみでは知りえない現場が実際に抱える、子ども虐待における問題、特に親の配慮の制限後の問題について知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成27年度は研究計画に従い、以下のような成果が得られた。このような進捗状況から判断して、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。 ①文献調査や学会などへの参加により、日本法における親権停止制度の研究を継続、発展させることができた。また、ドイツ法に関する研究も、親の配慮の制限に関する研究を継続、発展させることができた。特に、平成27年8月、9月にドイツに渡航できたことにより、ドイツ法に関する最新の情報を入手することができた意義は大きかった。 ②平成27年8月、9月にドイツにおいて、家族法の研究者や家族問題に関する研究者より本研究について助言を得ることができ、本研究の調査の幅を広げることに役立った。特に、これらの助言を踏まえて、ドイツ民法における親の配慮の制限に留まらず、社会保障法典第8編についても調査を進めることができた点は非常に有意義であった。 ③昨年度に続いて、ドイツのミュンヘンにおいて、同市の青少年局の担当者にインタビュー調査を行うことができた。実務上の問題について知ることができただけではなく、継続的に情報を得られたことにより、問題をより深く理解することができ、非常に意義深かった。日本における親権停止期間中および停止期間終了段階における公的検査のモデル案を考察する上で、実務上の運用状況や問題を知ることは大変参考になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、当初の研究実施計画に従い、平成26年度および平成27年度に行った研究を継続し、より発展させる。具体的には、まず文献研究により、日本法やドイツ法の研究を行う。特に、新たな論文や判例を中心に検討を行う予定である。このような文献研究に加え、学会や研究会への参加などにより最新の議論状況を把握することに努める。次に、ドイツにおける研究者や実務家へのインタビュー調査を継続して行う。それによって本研究への助言を得るだけではなく、最新の議論状況を把握するとともにや実務上の問題などについても把握したい。 以上に加えて、平成28年度においては、ドイツにおける親の配慮権の停止とその後の裁判所による定期的な検査制度やその運用状況の検討を踏まえて、日本法における親権停止期間中および停止期間終了段階における公的検査の必要性と、日本の実情にあったモデル案を示したい。 その上で、本研究の成果を、申請者が所属する学会や研究会において報告を行いたい。また、論文などを執筆し研究成果を公表し、研究成果を社会に還元する予定である。
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Causes of Carryover |
必要な物品を購入し、旅費も計上したけれども、端数として380円の余りが生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度分の助成金と合わせ文献の購入に充て、有効に活用したい。
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