2014 Fiscal Year Research-status Report
2012年英国金融市場法改革にみる市場志向型消費者保護法の検討
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26780055
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧 佐智代 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (40543517)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金融サービス法 / 上限金利 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.英国2012年金融サービス法の立法過程で上限金利規制をめぐる議論がにわかに巻き起こった。1854年に利息制限法を廃止して以降、少なくとも法定による上限金利規制を行ってこなかった英国は、直接的な市場介入に対して禁欲的な姿勢を堅持してきた。大きな舵を切ったかにも見えるこの改革の経緯をまず検討した。 2.同改革のそもそもの背景には、財務省、金融サービス機構、イングランド銀行の3極体制により、2007年末のノーザン・ロック銀行の破綻に始まる英国国内金融危機への対応策が遅れたことへの批判にあった。そこで、本改革の一つの目玉が、金融サービス機構を廃止し新たにFCAを設置して消費者信用市場に関する権限を公正取引庁からFCAに委譲することである。これは消費者信用市場の商品に関しても、他の金融サービス・投資商品と同様に2000年金融サービス市場法に服せしめることを企図していた。この目的は、他の金融サービス・投資商品と同様に消費者信用市場の商品に関しても2000年金融サービス市場法による同一の規制を及ぼすことにより、不必要な二重規制や同一商品が異なった規制に置かれることによる消費者保護の齟齬を取り除くことにあった。 3.しかし、これら2012年金融サービス法案の策定過程では、上限金利規制の議論は行われていない。本検討により、(1)上院議会における法案審議過程で、野党議員によって、FCAが消費者信用契約に関して利息や手数料などを含めた総コストの上限を画するルールを策定する権限を有するとする修正案が提出されたのを機に、突如として上限金利規制を巡る議論が巻き起こっていること、そして、(2)この野党議員による修正動議は、実は当時英国に限らず米国においても社会問題となっていた小口金融であるペイデー・ローン商品による多重債務問題を背景にしていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
英国訪問による調査を翌年度に変更したため。
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Strategy for Future Research Activity |
英国を訪問し、ペイデー・ローン業者による広告・販売手法等について、その実態および被害状況について調査を行う予定である。 また、消費者信用法典における「不公正な関係」の判断要素の一つとして高金利・暴利であることを問題とすることにより、判例法理として上限金利規制の手法を有していたところ、今般の改革と同法理の関係がどのように整理されるかを検討する。
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Causes of Carryover |
本年度に英国訪問によるペイデー・ローンによる多重債務問題についての調査を実施する計画であったが、翌年度に変更しため、外国訪問の旅費を繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)繰り越し分については、渡英費・滞在費にあてられる。 (2)翌年度分として請求した助成金分は、2012年金融サービス法および消費者信用市場法に関する外国図書の購入費、国内研究会で報告を行なうための旅費を予定している。
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