2016 Fiscal Year Annual Research Report
Nonperformance due to failure of the creditor to co-operate in performance of contract and the paradigm shift in the German law of obligations
Project/Area Number |
26780063
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
坂口 甲 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20508402)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 後発的不能 / 主観的不能 / 履行請求権の限界事由 / 債務不履行責任の免責事由 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 クーヤキウスやドネッルスなどの人文主義法学者は、原始的な履行障害に関する学説彙纂の法文(Dig. 45, 1, 137, 4-5)を手がかりとして、自然の障害(impedimentum naturale)と履行困難(difficultas)という履行障害類型をすでに区別していた。サヴィニーは、この区別にそれぞれ「客観的不能」、「主観的不能(subjektives Unmoeglichkeit)」という名称を与えると同時に、この区別を後発的不能に持ち込んだ。履行困難が不能概念に取り込まれたことにより、18世紀に特定物の滅失から発展した後発的不能概念は大きく拡張し、大幅に柔軟化した。 2 モムゼンは、この区別を取り入れつつ、後発的客観的不能の場合だけではなく、後発的主観的不能の場合にも債務者の免責を認めた(後発的不能が免責事由であることは、すでに平成24年度に明らかにした)。すなわち、債務者の責めに帰すことができない事由により債務の履行が主観的に不能になったときは、債務者は債務から解放されると同時に、損害賠償責任も負わない。このような効果の発生にとって重要なのは、債務の内容に照らして債務者の責めに帰すべき事由があるかどうかである。こうして、主観的不能を含む後発的不能は、履行請求権の限界事由であると同時に、損害賠償責任の免責事由にも位置付けられた。 3 このようなモムゼンの立場は、ドレスデン草案にほぼ忠実に受容され、それがドイツ民法典の部分草案に引き継がれた。ドイツ民法典を起草するための審議過程で、履行請求権の限界事由と損害賠償責任の免責事由を区別する立場も主張されたものの、最終的には、両者を後発的不能に統一するモムゼンの見解が基本的に維持された。これが、ドイツ民法典旧規定275条および279条である。
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