2014 Fiscal Year Research-status Report
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26780067
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
李 艶紅 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (00646226)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 種類株式制度 / 拒否権付種類株式 / 黄金株 / 株式会社の所有構造 / 会社支配 / 会社支配権の帰属 / 上場会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に実施した研究の主な成果としては、「黄金株」に関するこれまでの論文を修正加筆したうえで、博士学位論文「株式会社法制における種類株式制度と会社支配権の帰属のあり方~EUにおける『黄金株』問題を契機として~」として提出し(以下、「博士論文」という)、審査合格の判定を受けたことである。 博士論文は、主として、会社法上の拒否権付種類株式に注目したものであり、比較法の観点からEUにおける「黄金株」問題を取り上げた。具体的には、日本の株式会社法制において、会社の資金調達の便宜を図るために利用されてきた種類株式制度が、とくに21世紀に入ってから規制緩和の一途を辿り、会社の資金調達の側面のみならず、会社の支配権の帰属にも影響を及ぼしうるような種類株式、たとえば拒否権付種類株式のような株式をも制度上認められるようになってきた。拒否権付種類株式は、株主総会・取締役会などの決議事項に対して拒否権を有する種類株式であって、会社法上いかなる決議事項が拒否権の対象事項になりうるのか、またはなんら制約があるのかについて定められていない。しかしながら、上場会社の場合において、拒否権付種類株式は取引所のルールによって原則的に禁止され、平成18年5月施行の新会社法以降実務上においての利用発達が見られないままである。そのため、博士論文はEUにおける「黄金株(golden shares)」を取り上げ、その生成、利用および評価と批判などを紹介検討して、拒否権付種類株式を考えるうえでの比較対象となるよう博士論文として提出した。 博士論文の内容を踏まえ、次年度では、具体的にEU諸国において利用された「黄金株」の現状、または「黄金株」を廃止した会社の現在の所有構造に焦点を当てる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成26年度にEU諸国における実態調査と資料収集を中心に行う計画であったが、予定を変更して、これまでの論文の修正と加筆を行った。そのような研究成果は学位論文として結実した。 これまでの研究成果を振り返り、論文の修正と加筆を行ったことを通じて、より深く問題の所在を理解し、より効果的な問題解決の道筋の模索につながったため、予定変更はあったものの、2年間の研究計画全般から見ると、自己評価としては概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、これまでの研究成果を基礎とし、より具体的なEU諸国における「黄金株」の利用実態を調査しつつ、そのような実態に基づく現在の問題点なども抽出していきたいと考える。 研究計画の一部として、イタリアにおける「黄金株」のみならず、「黄金株」と同様に会社支配権の帰属に影響をもたらすような会社の支配権を強化するメカニズムの利用状況を調査し、近年の学術論文を参考にして、イタリアにおける近時の会社法改正がそのような状況にいかなる影響を与えたのかなどをも研究範囲に含めて進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の使用計画は、EU諸国における実態調査を含めていたが、論文執筆などにより多くの時間を費やしたため、実現できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の使用計画のなかで、EU諸国での実態調査と現地での資料収集を計画している。
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