2015 Fiscal Year Annual Research Report
上場会社の不実の情報開示に関する民事責任制度の総合的研究
Project/Area Number |
26780069
|
Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤林 大地 西南学院大学, 法学部, 准教授 (80631902)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 不実開示 / 不実表示 / 粉飾決算 / 民事責任 / 劣後化 / 倒産 / 発行会社 / 上場会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度は、発行会社の不実開示に関する民事責任制度に係る利害関係者間の利益調整の在り方に関して、発行会社が倒産した場合について研究を行った。具体的には、投資者(株主)の損害賠償請求権が発行会社の倒産手続において一般債権と劣後債権の何れとして処遇されるべきであるかという問題の検討を行った。 比較法的考察の結果、①不実開示によって投資者に生じた損失の衡平な分担、②不実開示によって投資者に生じた損失の効率的な分散、③不実開示に関するモニタリングへの影響、④発行会社の資金調達への影響、⑤発行会社の倒産手続への影響が考慮要素となることを明らかにした。具体的には、①については、投資者の損害賠償請求権を一般債権として処遇する場合は発行会社の一般債権者に投資者の損失が一部移転されることになるが、一般債権者にはリスク管理能力等が低い者が含まれるため衡平性に欠ける結果が生じ得ることなどを明らかにした。また、②については、一般債権として処遇する場合の損失の分散効果は正と負の両方の面を有しており、決定的要素とはならないことを明らかにした。また、③については、モニタリングを期待できる大株主等のインセンティブは何れの処遇を採用しても殆ど変わらないことを明らかにした。また、④については、何れの処遇を採用してもトータルでは資金調達コストに差が生じない可能性があり、また倒産手続における資金調達にも殆ど影響しないことを明らかにした。最後に、⑤については、一般債権として処遇することによる投資者の民事再生手続への参加は、短期的利益の実現を図る再生計画の選択に繋がり得る点で非効率的となり得るが、民事再生法上の一般的問題として解決されるべきであることを明らかにした。 そして、以上の検討の結果として、①の点から投資者の損害賠償請求権を劣後債権として処遇することが望ましいという結論を得た。
|
Research Products
(9 results)